2018年8月17日金曜日

腸管出血性大腸菌に感染する

 腸管出血性大腸菌感染症を発症した。その経験をまとめておく。

8月12日
 21時頃 やけにガスが溜まり、腹が張る。何度も放屁する。
 22時頃 ガスが溜まり腹が張るだけでなく腸がグルグル、キュルキュル動く
 23時頃 軽い腹痛を伴うようになり、最初のトイレ。下痢が始まる。
  3度ほどトイレに通い、手持ちの整腸薬を飲み、腹の張と腹痛を感じながら就寝

8月13日 朝食におにぎり。それ以降絶食。
 6時頃 腹痛が強く、目が覚め、トイレに直行する。激しい下痢。整腸薬服用。
  ※ 30分~60分に1度くらいトイレに通う。

 9時頃 下痢後、洋式便所の水がワインのような赤に染まる。血性の下痢が始まる。
  ※ 何度も血性の下痢があり病院受診の必要を実感する。

 11時頃 岡山協立病院を受診(杉村先生) 36.7℃ 採血、補液の点滴、整腸薬

 問診では、この1週間ほどの食事について聞かれる。四日前に、職員の懇親会で焼肉を食べに行っており、杉村先生の説は、その焼肉ではないかとのことだったが、確証があるわけではない。
 痔主であることを告げたため、人生初めてのジギタール。どうやら痔の出血ではなく、やはり腸からの出血だ。腹部を触れられるとお腹の右側、縦のラインに痛みがある。「腸が腫れている」とのこと。結腸全体が腫れているようだが、上向結腸であろう右腹部の縦方向に痛みのラインがある。
 「細菌性腸炎ですね。抗菌薬は症状を悪化させることもあるので、整腸剤を処方しますので、様子を見てください。下痢で体内の水分が出てしまうので、水分補給をしっかりやってください。今日は点滴をしておきましょう。血液検査、便検査もやっておきましょう。」
 ※ 受診後帰宅。毎食後整腸薬を服用。腹痛と血性の下痢が続く。トイレ回数10回以上。

8月14日 熱感があり体温を測るが36.8℃と平熱より少し高い程度。水分補給のみでは力が出ないので、24時間ぶりにおにぎりを食べる。持続的な腹痛、周期的に強い腹痛がやってくる。食べていないこともあり、今日は、ほぼ血液がそのまま出ているのではと思えるような濃赤色の水様便がでる。今日は、大腸全体が痛いし、自分で触っても固く腫れている。

 15時頃、遅い昼食。素麺、ヒジキの炊いたの、金平ごぼう少々。食べたのが良かったのか、自然治癒力が攻勢に転じたのか、腹痛が多少和らいだような気がする。食欲も出てくる。今日のトイレ回数12回。

8月15日 血性の下痢が続いているが、仕事で面談が入っており出勤。断続的に腹痛がやってくるが昨日ほど痛みは強くない。水様便から泥状便に変化。今日から、食事は平常通り。腹部をおさえると大腸が腫れて痛みがあるのは変わらず。
 16時頃 杉村先生から電話。「便検査で腸管出血性大腸菌が検出されました。」症状を問われ経過を報告。「軽快に向かっているようなのでそう心配しなくても良いけど、ベロ毒素で腎機能障害がおこることがあるので、明日、受診してください。」
 拙い、出勤しなければよかったかと思ったが、すでに出勤してしまっている。どうしようと思ったが、スタッフに感染させてもいけないので、「私が触れたところを消毒してください。」と言い残して帰宅。途中、法人本部に連絡。

 熱感が続いているが、体温は36.6℃。周期的な腹痛はあるものの、痛みと痛みの間はずいぶん楽になった。トイレ回数8回。

8月16日 泥状の血液混じりの便が続く。岡山協立病院の杉村先生受診。診察の前に採血。血液検査の結果は、出血しているので貧血気味ではあるが、不安だった腎機能は問題なし。「指定伝染病なので保健所に報告することになる。保健所から問い合わせがあるから応えてください。」と杉村先生。病院から帰宅途中に保健所から電話あり、保健所に行くことになる。

 保健所では経過を聞かれ、食べたもののチェックを受け、勤務制限、家のトイレや洗面所などの消毒、職場のトイレの消毒、かみさんの便検査の勧告が出された。

 あらためて施設に電話し、トレイを次亜塩素酸水で消毒すること、懇親会に参加した職員に同じような症状の職員がいないか確認するよう指示する。

 下痢が治まって、二日続けて便検査でO-157が検出されなければ勤務制限が解除されるとのこと。来週半ばまでは出勤できそうにない。自分の触診でも大腸の腫れは続いており、押えると結構痛い。周期的にキリキリと痛みがやってくる。トイレ回数8回。

8月17日 軟便、肉眼的出血はなくなったが、まだ断続的に腹痛があり、完全復調にはもう少し時間が必要だ。大腸の腫れは治まっているようで固さを感じなくなったが、圧痛はある。周期的な腹痛もなくなってはいないが、痛みは軽い。トイレ回数5回(小便回数含まず)。小便でトイレに行くことがなかったが、本日、久しぶりに小便目的でトイレに行った。
 町内のOさんと暑気払いの予定だったが、さすがに延期させていただいた。

8月18日 朝から来週の祭りの準備。軟便4回。ガスが溜って腹部膨満感あり、下腹部圧痛あるも、周期的な痛みはほぼなくなったかな。

8月19日 下腹部の圧痛は治まるが、まだガスが溜まり、放屁ばかりしている。その他腹部症状はなくなり、ほぼ寛解した。明日から二日連続検便で、菌(-)ならば業務制限が解除される。

8月20日、21日と検便提出。

 O-157、ニュースで時々感染が報道されるが、あまり実感がないまま過ごしてきた。それが今回自分が感染することになったので、少々、驚き、いまさらながらに他人ごとではなかったのだと思い知ることになった。
 牛肉、豚肉からの感染だけでなく、最近では野菜などからも検出されているそうで、保健所ではこの二週間ほどの間に食べた物の確認作業が行われた。
 思い起こせば、O-157の名前を有名にしたのは1996年邑久町の学校給食でO-157床中毒事件が起こり、マスコミがそれを報道したことでO-157という名前が認知されるようになった。当時、常在菌である大腸菌から細菌兵器を開発しようとして作り出されたのがO-157だという細菌兵器説がまことしやかに囁かれたのを思い出したが、すぐに無くなったところを見ると単なる巷間流説であったのだろう。

 下痢、しかも血性の下痢をみると驚くし、それだけで悪い病気に罹ったような気になるが、病と闘う自然治癒力は持っておきたい。そのためにどうするか、食生活や定期的な有酸素運動など普段の暮らしを見直し、病原菌に対抗できる体力を維持・増進したいものだ。病気は、普段の暮らしを見直すきっかけにもなるので、必ずしも悪いことばかりではないなと思っている。

2018年7月25日水曜日

大飯原発をとめろ

2018年7月8日付 しんぶん赤旗

  関西電力・大飯原発の運転差し止めを求めた住民訴訟で、名古屋高裁は原発の稼働差し止めを認めた一審判決を取消しました。

 あらためて、福井地裁の判決がどのようなものだったのかを振り返っておきたいと思います。以下は、メールマガジン「オルタ広場」からの引用です。
1.人格権
 人格権は憲法上の権利、人の生命を基礎とする。わが国の法制下でこれを超える価値を見いだすことはできない。

2.福島原発事故
 原子力委員会委員長は福島第1原発から250キロ圏内に居住する住民に避難を勧告する可能性を検討し、チェルノブイリ事故でも同様の規模に及んだ。
 ウクライナ、ベラルーシで今も避難が続く事実は、放射性物質のもたらす健康被害についての楽観的な見方、避難区域は最小限のもので足りるという見解の正当性に重大な疑問を投げかける。250キロは緊急時に想定された数字だが過大と判断できない。

3.本件原発に求められる安全性
(1)原子力発電所に求められる安全性
 原発の稼働は法的には電気を生み出す一手段である経済活動の自由に属し、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきだ。自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広範に奪われる事態を招く可能性があるのは原発事故以外に想定しにくい。具体的危険性が万が一でもあれば、差し止めが認められるのは当然である。
 原子力技術の危険性の本質、そのもたらす被害の大きさは福島原発事故により、十分に明らかになった。このような事態を招く具体的な危険性が万が一でもあるのかが判断の対象である。福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい。

(2)原子炉等規制法に基づく審査との関係
 4の考えは、人格権と条理によって導かれる。原子炉等規制法などの行政法規のあり方、内容によって左右されない。新規制基準の対象となっている事項についても、基準への適合性や規制委員会による基準適合性審査の適否という観点からではなく、3(1)の理にもとづいて裁判所の判断が及ぼされるべきである。

4 原子力発電所の特性
 原子力発電技術で発生するエネルギーは極めて膨大で、運転停止後も電気と水で原子炉の冷却を継続しなければならない。その間、何時間か電源が失われるだけで事故につながり、事故は時の経過に従って拡大する。これは原子力発電に内在する本質的な危険である。施設の損傷に結びつく地震が起きた場合、止める、冷やす、閉じ込めるという三つの要請がそろって初めて原発の安全性が保たれる。福島原発事故では冷やすことができず放射性物質が外部に放出された。本件原発には地震の際の冷やす機能、閉じ込める構造に次の欠陥がある。

5 冷却機能の維持
(1)ストレステストのクリフエッジを超える可能性を認めた。
 1260ガルを超える地震では冷却システムが崩壊し、メルトダウンに結びつくことは被告も認めている。ストレステストの基準とされた1260ガルを超える地震も起こりうると判断した。わが国の地震学会は大規模な地震の発生を一度も予知できていない。
 地震は地下深くで起こる現象であるから、その発生の機序の分析は仮説や推測に依拠せざるを得ない、地震は太古の昔から存在するが、正確な記録は近時のものに限られ、頼るべき過去のデーターはきわめて限られていることを指摘した。

(2)700ガルを超えて1260ガルに至らない地震について、過酷事故につながる危険がある。

① 被告は、700ガルを超えるが1260ガルに至らない地震への対応策があり、大事故に至らないと主張する。被告はイベントツリーを策定してその対策をとれば安全としているが、イベントツリーによる対策が有効であることは論証されていない。
 事態が深刻であるほど、混乱と焦燥の中で従業員に適切、迅速な措置を取ることは求めることができない。地震は従業員が少なくなる夜も昼と同じ確率で起き、人員の数や指揮命令系統の中心の所長がいるかいないかが大きな意味を持つことは明白だ。
 また対応策を取るには、どんな事態が起きているか把握することが前提だが、その把握は困難だ。福島原発事故でも地震がどんな損傷をもたらしたかの確定には至っていない。現場に立ち入ることができず、原因は確定できない可能性が高い。
 仮にいかなる事態が起きているか把握できたとしても、全交流電源喪失から炉心損傷開始までは5時間余りで、そこからメルトダウン開始まで2時間もないなど残された時間は限られている。
 地震で複数の設備が同時にあるいは相前後して使えなくなったり、故障したりすることも当然考えられ、防御設備が複数あることは安全性を大きく高めるものではない。 原発に通ずる道路は限られ、施設外部からの支援も期待できない。

② (基準地震動の信頼性)
 従来と同様の手法によって策定された基準地震動では、これを超える地震動が発生する危険があるとし、とりわけ、4つの原発に5回にわたり想定した基準地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来しているという事実を重視した。このような誤りが重ねられた理由は学術的に解明されるべきだが、裁判所が立ち入る必要はない。
 これらの事例は「地震という自然の前における人間の能力の見解を示すもの」というほかない。基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは、根拠のない楽観的見通しである。

③(安全余裕について)
 被告は安全余裕があり基準地震動を超えても重要な設備の安全は確保できるとしたが、判決は、基準を超えれば設備の安全は確保できない、とした。過去に基準地震動を超えても耐えられた例があるとしても、今後基準を超えたときに施設が損傷しないことを根拠づけるものではない。

(3)700ガルを超えない地震について
 地震における外部電源の喪失や主給水の遮断が、700ガルを超えない基準地震動以下の地震動によって生じ得ることに争いがない。しかし、外部電源と主給水が同時に失われれば、限られた手段が効を奏さなければ大事故となる。
 補助給水には限界があり、㈰主蒸気逃し弁による熱放出、㈪充てん系によるホウ酸の添加、㈫余熱除去系による冷却のうち、一つでも失敗すれば、補助給水設備による蒸気発生器への給水ができないのと同様の事態に進展する。
主給水系が安全上重要でないという被告の主張は理解に苦しむ。

6 閉じ込め機能(使用済み核燃料の危険性)
 使用済み核燃料は原子炉格納容器の外の建屋内にある使用済み核燃料プールと呼ばれる水槽内に置かれている。本数は千本を超えるが、プールから放射性物質が漏れた時、敷地外部に放出されることを防御する原子炉格納容器のような堅固な設備は存在しない。
 福島原発事故で、4号機のプールに納められた使用済み核燃料が危機的状態に陥り、この危険性ゆえ避難計画が検討された。原子力委員会委員長の被害想定で、最も重大な被害を及ぼすと想定されたのはプールからの放射能汚染だ。使用済み核燃料は外部からの不測の事態に対し、堅固に防御を固めて初めて万全の措置といえる。
 大飯原発では、全交流電源喪失から3日たたずしてプールの冠水状態を維持できなくなる危機的状況に陥る。そのようなものが、堅固な設備に閉じ込められないまま、むき出しに近い状態になっている。国民の安全が優先されるべきであるとの見識に立たず、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しで対応が成り立っている。

7 本件原発の現在の安全性
 人格権を放射性物質の危険から守るとの観点からみると、安全技術と設備は、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立つ脆弱(ぜいじゃく)なものと認めざるを得ない。

8 原告らのその余の主張
 さまざまな違法理由や環境権に基づく主張、高レベル放射性廃棄物の問題などについては、判断の必要がない。幾世代にもわたる後の人々に対する我々世代の責任という道義的にはこれ以上ない重い問題について裁判所に判断する資格が与えられているか、疑問である。

9 被告のその余の主張について
 被告は原発稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いという問題を並べて論じるような議論に加わり、議論の当否を判断すること自体、法的には許されない。原発停止で多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の損失だ。
 被告は、原発稼働がCO2(二酸化炭素)排出削減に資すると主張するが、福島原発事故はわが国始まって以来最大の環境汚染であり、原発の運転継続の根拠とすることは甚だしく筋違いだ。

 この判決は、東京電力福一原発のシビアアクシデントを真正面から見据えた判決として優れた判決だったと思います。その判決をひっくり返したのが、名古屋高裁金沢支部の今回の判決でした。許しがたいのは、内藤裁判長が原発の廃止・禁止について「判断は司法の役割を超え……」と司法としての判断をしなかったことです。司法の役割を自ら放棄し、住民の権利を奪う判決を出したことは、司法にとって自殺行為でしょう。非常に残念です。

2018年7月14日土曜日

大地震の危険性急上昇

2018年6月27日付 しんぶん赤旗

 政府の地震調査委員会は、6月26日に2018年版全国地震動予測地図を公表しました。それによると今後30年以内に震度6以上の揺れが起こる確率は、昨年12月公表の千島海溝沿い巨大地震の長期評価を受け、北海道東部で大幅に上昇しています。また、南海トラフ地震の発生が近づいていると予測される関東から四国の太平洋側は微増が続きました。

 この赤いゾーンにどれだけの原発があるのか、恐ろしくてただちに全原発を廃炉にしたくなるのは私だけではないと思います。

 どうみても地震対策が進んでいる余には見えないところが多く、そういう意味でも、国のお金の使い方は間違っているという思いを強くします。日本の軍事費はついに5兆円を突破しました。10兆円まで増やすという意見もあるようですが、朝鮮半島の脅威がなくなろうとしている今、軍事費に財政を投入する必要性は格段に低くなったと思います。軍事費を大きく削って、この大地震が発生する確率の高い赤いゾーンの地震対策に思い切って国の財政を投入して、地震や津波による被害を最小限に抑えるための備えをするべきです。

 それこそが国民の願いであり、国民の願いにこたえることが政治の第一義的な使命ではないでしょうか。もっとも、今の安倍内閣にそれができるのかといえば、どうみてもできそうもないという、国民にとっては深刻な事態が進行しているということではありますが・・・。

2018年6月9日土曜日

台風の速度低下

2018年6月7日付 しんぶん赤旗

 台風やハリケーンなど発達した熱帯低気圧の速度がこの70年ほどの間に大幅に低下していることがわかりました。台風の移動速度が遅い場合、台風のルート上にある地域の降水量が増加することになり、水害の発生や強風によって大きな被害を生むことにつながります。
 アメリカ海洋大気局(NOAA)で天候の研究を行っているジェームズ・コーシン博士が、7日付の科学誌「ネイチャー」に発表したもの。研究チームによると、地球上の熱帯低気圧の移動速度が1949年~2016年にかけて約10%減速しているとのことです。

 コーシン氏らの研究チームは、熱帯低気圧の移動速度が低下している理由について、地球の気候変動が原因であると指摘します。実際、地球温暖化の影響により極の大気が暖かくなっており、熱帯との気圧差が徐々に小さくなってきています。この結果、熱帯から極に向かって流れる風が弱まり、熱帯低気圧の移動速度を減速させているということです。
 また、温暖化によって大気が暖かくなることは、空気中に含まれる水分量も多くなることを意味しており、雨量の増加にもつながります。このため、熱帯低気圧が10%遅くなるだけであっても、実際の雨量は2倍に増える可能性があるとしています。

 このブログでは、温暖化関連の記事を見つけるたびに取り上げていますが、その頻度が増えており、しかも影響の表れ方は、単に天候の変化にとどまらず、漁業や農業への影響をはじめ、人々の暮らしに直接影響を与えるようになっています。「我が亡き後に洪水よ来たれ」という資本主義の利潤追求一本やりのやり方では、地球と人類の共生関係が維持できなくなりつつあることに、もう気がつかないといけません。そうでなければ人類はこの地上で生きていけない状況に追い込まれてしまう、そんな危機感を感じている私なのでした。

東電柏崎刈羽原発 液状化の恐れ

2018年6月6日付 しんぶん赤旗

 原子力規制委員会は12月27日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(新潟県)の安全審査の合格証にあたる「審査書」を正式決定しました。東電福島第1原発事故後に定められた新規制基準に、東電の原発が合格したのは初めてのことです。また、福島第1原発と同じ沸騰水型の合格も震災後初となります。

 再稼働には地元同意などの手続きが残っており、まさに今、新潟県知事選挙が闘われているが、この結果によっては再稼働を許すことになってしまうわけです。

 ところが、今年2月になって、東京電力は、6、7号機の重要施設であるフィルターベントの基礎やガスタービン発電機の基礎、さらに原子炉の冷却水のための水を取り込む取水路が地震時の液状化で損傷する可能性があるとして、補強工事を行う方針を発表しました。特に、フィルターベントは重大事故が起きた時に、原子炉格納容器の圧力を逃がすための設備で、機能を失えば深刻な事態につながります(下図参照)。

出典:原子力規制委員会

 原子力規制委員会の更田委員長は、5月の定例会見で「許可前の審査会合の資料ですでに液状化については触れられ、液状化の可能性があれば対策を取ります、とある。」と述べ、許可後にわかったことではないと説明し、問題はないとしています。
 しかし、それで良いのでしょうか?再稼働を認める判断として、フィルターベントの基礎が地震による液状化で問題が生ずる可能性があることを知っていて、安全審査に合格を出しているわけです。これでは杜撰な審査だと批判されても仕方ないでしょう。
 フィルターベントが機能しないと深刻な事故につながることは、福島第一原発で経験済みなわけですから、同じ過ちにつながる可能性があることを把握した以上、いったん安全審査に合格とした判断を撤回し、少なくとも、液状化対策が済んで問題ないことが確認できるまで、安全という判断をするべきではありません。
 そもそも原子力発電所の再稼働ありきの安全審査となっていることが問題です。安全審査に合格を出すのならば、専門家や住民から疑問や批判が出ない程度にまで詳細に検討するという姿勢を見せなければ、再稼働反対の意見もある中での原発の再稼働は、そう簡単なことではないはずです。

 だからこそ、今争われている新潟県知事選挙で、きっぱりと原子力発電所の再稼働に反対する池田ちかこ候補に頑張ってもらわないといけません。

温暖化の足音

2018年6月3日付 しんぶん赤旗

 気象庁が発表した2018年(平成30年)春(3月~5月)の天候の特徴は以下のとおりです。
〇 全国的に気温がかなり高く、東日本では記録的な高温
 期間を通して暖かい空気に覆われやすかったため、全国的に気温の高い状態が概ね持続し、平均気温はかなり高かった。特に東日本の平年差は+2.0℃で、春としては統計を開始した1946年以降では1位の高温となった。
〇 降水量は北・東・西日本で多く、沖縄・奄美でかなり少なかった
 低気圧の通過時に、南から湿った空気が流れ込みやすかったため、北・東・西日本では降水量が多く、北・東日本日本海側ではかなり多かった。一方、沖縄・奄美では、湿った空気や低気圧の影響を受けにくかったため、かなり少なかった。
出典:気象庁発表資料

〇 日照時間は東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美でかなり多かった
東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美では高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かったため、日照時間がかなり多かった。 
出典:気象庁発表資料

 地球表面の大気や海洋の平均温度は「地球の平均気温」または「地上平均気温」と呼ばれ、地球全体の気候の変化を表す指標として用いられています。19世紀から始まった科学的な気温の観測をもとに統計が取られているわけですが、地球の平均気温は1906年から2005年の100年間で0.74℃(誤差は±0.18°C)上昇しており、長期的に上昇傾向にある事は「疑う余地が無い」と評価されています。上昇のペースは20世紀後半以降、加速する傾向が観測されていて、これに原因だと見られる、海水面(海面水位)の上昇や気象の変化が観測され、生態系や人類の活動への悪影響が出始めています。

 確実に温暖化の足音が高くなってきています。今、何とかしないと手遅れになる・・・そんな恐怖をいつも感じているのですが、どうしたら地球上のすべての国で、温暖化防止で足並みをそろえることができるのか、難しい課題ですが、そこに向けて努力し続けることを止めるわけにはいきません。

2018年6月8日金曜日

セシウムボール

2018年6月3日付 しんぶん赤旗

 九州大学の宇都宮聡准教授らの研究チームが東京電力福一原発事故で飛散した高濃度放射性セシウム含有微粒子(セシウムボール)が環境中にどれだけ存在するかを分析できる簡易定量法の開発に成功したらしい。
hい形態と、溶けにくいガラス質のセシウムボールの二種類があり、この分別のため、放射性物質を可視化する「オートラジオグラフィー」という手法を用いて粒子の大きさや放射能を分析し、判別方法を確立した。

 実際に福島の土壌で測定したところ、土壌の放射能の8~38%がセシウムボールによること、セシウムボールが最大で土壌1g当り1,020個存在することが分かった。今後、様々な環境での分布状況や、除染土の汚染状況、自然界での移行挙動を調べるのに役立つのではないかと期待されている。

 原発事故による放射能汚染は、まだまだ解決の道筋も見えない深刻な状態にあるにもかかわらず、放射能汚染の除染で集めた汚染土の再利用が決まったという信じがたいニュースが飛び込んで来たり、実際に放射能に汚染されているのにもかかわらず、風評被害だと大きな声をあげる人がいたり、放射能被害を過小に、あるいはむしろ積極的になかったかのように評価する向きがある中で、セシウムボールの定量検査が簡単にできるようになるのは良いことだ。是非とも、積極的に活用して、放射能汚染しているものは汚染しているものとして、正しく取り扱うためのツールとして役立ってほしいと思う。

赤ちゃん過去最少

2018年6月3日付 しんぶん赤旗

 6月1日、厚生労働省が2017年の人口動態統計を公表しました。一人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す「合計特殊出生率」が1.43となり2年連続で低下、出生数は946,060人で、前年に続いて100万人を割り込み、過去最少を記録しました。
 一方死亡数は、戦後最多の1,340,433人となり、死亡数から出生数を差し引いた自然減は394,373人で過去最大幅となり、人口減少が加速しました。2005年に戦後初めて死亡数が出生数を上回り、2007年以降は11年連続で自然減の幅が拡大しています。

 結婚したカップルは戦後最小の606,863組、平均初婚年齢は男性31.1歳、女性29.4歳で女性の第一子出産時の平均年齢は30.7歳でした。

 少子化対策が重要課題の一つになっているわけですが、それでも、一貫して少子化が進んでいます。今の日本で、結婚し、子どもをもうけるということがいかに難しいかという現実を反映したことなのだと思います。
 貧困の広がり、切り下げられていく社会保障、働く権利が守られない雇用の場、これでは少子化対策に力を入れているとはとても思えません。

2018年6月7日木曜日

CO2濃度、最高を更新

2018年6月1日付 しんぶん赤旗

 気象庁の発表によると、岩手県大船渡市と南鳥島、与那国島で観測した二酸化炭素(Co2)濃度の2017年平均値がいずれも410ppm弱となり、観測史上最高を更新したとのことです。Co2濃度は観測を開始して以来一貫して上昇しており、温暖化などの影響が懸念されます。
 以下は、気象庁の発表から引用です。

 このグラフは、温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)が世界各地の観測データを収集し、それをもとに解析した地球全体の二酸化炭素濃度の経年変化を示しています。地球全体で見ても、濃度が上昇していることが分かります。


 WDCGGが収集したデータをもとに、緯度帯別に平均した大気中の二酸化炭素月平均濃度の経年変化を示します。
 緯度帯別に見ると、相対的に北半球の中・高緯度帯の濃度が高く、南半球では濃度が低くなっています。これは、二酸化炭素の放出源が北半球に多く存在するためです。
 また、春から夏に減少し、夏から翌春にかけて増加する季節変動は、主に陸域の植物活動によるものです。このため、陸域面積の多い北半球では季節変動の振幅が大きく、陸域の面積の少ない南半球では振幅が小さくなっています。

 いずれにしても、二酸化炭素量の増大は地球の温暖化をもたらすと同時に、海流の大循環の流れを変えさらなる温暖化につながっています。二酸化炭素排出量の削減は可及的速やかに取り組まなければならない課題だと私は思います。

2018年6月6日水曜日

個人主義を考える

 最近、個人主義とは何かということを考える機会がありました。困ったときのWikipediaで調べてみると次のように書かれています。

 国家や社会の権威に対して個人の権利と自由を尊重することを主張する立場。あるいは共同体や国家、民族、家の重要性の根拠を個人の尊厳に求め、その権利と義務の発生原理を説く思想。ラテン語のindividuus(不可分なもの)に由来する。対語は、全体主義・集団主義。

 「日本は、欧米の個人主義思想を学んだ。」と言われていますが、本当にそうでしょうか。欧米諸国は地続きで人が行き交う多民族国家です。色んな人種、宗教、文化的な価値観を持つ人たちが集まっているわけですから、一人ひとりの違いを認め合い、自由を尊重し合うこと抜きには集団が成り立たないわけです。そのうえで会社などの組織では、チームワークで仕事を片付けていくということになるわけです。

 ところが日本は島国で、長い歴史の中で互いの常識を「暗黙の了解」で共有できるほど同質性の高い国民です。最近、若い人たちとつきあうと、ちょっと違うかなという感覚を覚えることもありますが、コミュニケーションを多少省略しても分かり合うことができたのです。そこに個人主義という考え方が入ってきたのですが、その時に、誤解が生まれたように思います。多くの日本人が考える個人主義は、実は、利己主義ではないかと私は思うのです。

 例えば、電車やバスを思い描いてみてください。自分も含め、若い人たちが座席に座っています。そこに、足元のおぼつかない高齢者が乗車してきました。誰も席を譲ろうとしません。この席は私が先に座っていたので、私が降りるまでの間、この席は私に占有権がある、この席に座り続けることは私の権利である!というわけです。
 あるいはまた、会社でみんなが残業している場面を想像してください。てきぱきと要領よく実務をこなす人がいる一方で、じっくりと正確性重視で実務を進める人がいて、早く仕事が済む人、時間がかかる人に分かれます。早く済んだ人は、私の担当業務は終了したので、お先に失礼します!といって帰っていきます。自分の仕事を早く終えたので、みんなより先に帰る権利がある!というわけです。

 これらのことは、私は、日本人の利己的な性格の表れだと思うんです。けっして個人主義ではありません。個人主義は集団に所属する一員としての役割や権利をお互いに尊重しあうことであって、一人ひとりが好き勝手にすることとは違います。当事者が解決できない問題で行き詰まっているのであれば、周囲の人間が助けるのが当たり前、そう考えることができるのが欧米での個人主義なのだろうと思います。ところが日本人は個人主義を利己主義のように理解してしまっているようです。

 利己主義を批判する人が、個人主義と称して実は利己的にふるまっている・・・。そんな姿を見るたびに、個人主義を正しく理解していないという思いを強くするのです。

2018年5月30日水曜日

鯖とイワシを喰おう

2018年5月30日付 しんぶん赤旗

 しんぶん赤旗の小さな囲み記事だが、ここに実は地球規模での気候変動が反映している。深層の大循環という言葉を聞いたことがあるだろうか。またの名を提唱者の名前をとって『ブロッカーの深層水のコンベヤーベルト』という。
 表層水が深層に達するまでに強く沈降する海域は、北大西洋のグリーンランド沖と南極付近のウェッテル海に限られている。グリーンランド沖でできた深層水は大西洋から南極まで南下して、南極付近にできた深層水と合流した後、南極大陸の周りを通ってインド洋と太平洋を巡っていく。深層水の流れは非常にゆっくりしており、蝸牛の移動速度よりもはるかに遅い時速3.6mほどだ。表層海流、例えば黒潮は4ノットくらいの速さで流れているというから時速7kmを超えているわけで、深層水の流速がいかに遅いかわかる。
 この海水を運ぶベルトコンベヤーが地球の温暖化でストップしたら、ストップはしないまでも流速が遅くなったり、流れが変化したら、それだけで地球の気候変動や食料供給に大きな影響が出る。私たち地球に生きているものすべての生命が危機に直面することになりかねない。

 日本の漁業の不振の背景には、実は、こうした深層の大循環がわずかに変化し、表層海流の流れが少し変わったことが影響しているのではないか。私は、そんな問題意識でこの問題をとらえている。だから、イカやサケ、サンマなどの不漁が目立つようになり、サバとイワシの漁獲が多いのではないかと。

 ところが、サバとイワシの消費量は、4割、2割と減少している。そこで、サバとイワシをもっと食べてもらおうという工夫が各地で始まっている。北海道釧路市では秋刀魚に替わる水産加工品として今春からイワシの菜の花漬けを発売した。

 う~ん、旨そうだ。一度、このイワシの菜の花漬け、食べてみたいものだ。

例外条件にご注意を

2018年5月29日付 しんぶん赤旗

 注意しないといけないですね。私も、実は、Amazonの通販で商品を頼んだ時、プライム会員加入で10%offで送料無料というので商品を頼んだら、商品と会員加入がセットになっていて、自動的にプライム会員になってしまったということがありました。クレジットカードで請求されて気づき、すぐに解約したので会費を払わずに済みましたが、こういうセット販売もそうですが、広告で『無料』などとしておきながら、無料の範囲はすごく限定的で、結局、無料となる人はいるのかというような話から、注意書きに例外条件(つまり無料とならない場合)が書かれているのを見落として、実際は有料で注文してしまうなんてことがあるんですね。
 この記事によると、アンケートに答えた約4割が「打消し表示」を見落として注文してしまったことがあると回答したそうです。私の場合もそうですが、「注意書きを読み飛ばす」こともあれば、「初回限定という文字が小さくて気づかなかった」ということもあるようです。
 「うまい話には裏がある」と何でも疑ってかかるのもいかがなものかという気もしますが、通販での購入はこういう落とし穴があるということを知っておいて損はないです。私も、一度失敗して以来、うまい話の時は隅々まで注意深く見て、落とし穴がないかどうかを確認してから前に進むようにしています。そうすると、けっこう隠れているもんですよ。落とし穴が!

2018年5月24日木曜日

都市への人口集中と限界集落

2018年5月22日付 しんぶん赤旗

 国連は、5月16日に公表した報告書の中で、世界の人口の68%が都市で暮らすようになると、人口の都市集中を予言しています。
 そして、世界最大の都市圏は、現在、通勤圏も含めて人口3,700万人を抱える東京と認定しました。都市圏として東京に続くのは、ニューデリーの2,900万人、上海の2,600万人、サンパウロやメキシコ市の2,200万人、カイロやムンバイ、北京、ダッカも約2,000万人です。このうち、インド、中国、ナイジェリアの3か国が特に2050年までに都市部の人口増加が著しいと国連はみています。

2018年5月20日付 しんぶん赤旗

 人口何千万人の話の後は、人口数人という話。広島県の北西部に位置する安芸太田町那須。住民は4世帯6人で、全員が78歳以上です。しかも、冬の間の住民はわずかに2人になります。他の4人は冬場、10㎞程離れた戸河町内の高齢者住宅「サポートセンターふれあい」に身を寄せたり、広島市内の子どもの所で過ごし春になると那須へ戻ってきます。

 そんな限界集落の営みを伝える記事を興味深く読みました。

 都市での暮らしと、田舎の暮らし、どちらが正しくて、どちらが人間らしくて・・・などと言うつもりは全くありません。都市に暮らしても、限界集落に暮らしても、どちらもその人らしい暮らしのあり方なのでしょう。そうした一人ひとりの暮らしを守っていくこと、抱えている困難を解決する道筋を見つけていくこと、そいうことができる社会であってほしいと私は考えています。

カギは下からの創生


2018年5月20日付 しんぶん赤旗

 しんぶん赤旗の書評欄が面白い。先日、本と話題で地域再生へのヒント、カギは「下からの創生」と題して3冊の本が紹介されていた。どれもまだ読んだことがない本ばかりが並んでいて、興味深く記事を読ませてもらった。
 私は、地域共同体を再生し、誰もが安心して暮しつづけることのできるまちを作ろうと活動をスタートさせたわけだが、ここには、まさに私が考えている地域再生の具体的な実践、地域おこしのヒントがあふれているような気がした。この三冊、県立図書館で借りて読んでみたいと思う。
 もともと私は、本は借りる派ではなく買う派だ。しかし、断捨離実行で今では本棚2本分以上本は増やさないと決めている。そこで、図書館を利用する機会が増えているのだが、出かけて行かなければならないという問題を除けば、実に便利だ。個人ではとてもストックできないほどの書籍や資料、画像データまであって、複製を作ってくれるし、至れり尽くせりのサービスだ。
 しかも岡山県立図書館は都道府県立図書館の中で利用者数日本一という素晴らしい図書館なのだ。身近なところにこんな素敵な図書館があるのだから使わない手はない。

2018年5月22日火曜日

ベースロード電源は不要

 ベースロード電源とは何か?海外文献でベースロードの定義を見ると次のように書かれています。
Base Load: The minimum amount of electric power delivered or required over a given period at a constant rate.
 愛用している翻訳ツール(Google翻訳)によると「所定の期間に一定の割合で供給または必要とされる電力の最小量。」ということになります。このベースロードを供給するのがベースロード電源です。しかし、このベースロード電源については、海外ではすでに過去のものだとする説が有力になっています。例えば『ベースロード電源は21世紀にふさわしいか?』と題したEnergy Democracyのホームページを読むと「再生可能エネルギー(以下、再エネ)が大量に導入された場合は石炭火力や原子力を硬直的に一定出力することが難しくなり、ベースロードという概念にとって代わる柔軟な系統運用が必要であることが示唆され」ています。
 要するに、太陽光の有無に左右される太陽光発電や風が吹くかどうかに影響を受ける風力発電などで電力をまかなう場合、曇りの日や夜間、無風の日の電力需要に対応して電力を供給する発電が必要となるわけですが、原子力や石炭火力などでその一定の期間の必要最小量の発電をしようというベースロー電源は、いったん発電が始まったら発電量をコントロールできない原子力発電では、発電量が不足するときにのみ発電するといった柔軟な運用ができないので、そもそもベースロード電源という考え方はとらないという国が増えているというわけです。

 日本は相変わらずベースロード電源としての原子力に固執し、30年先でもまだ原発をベースロード電源として使うと言っているわけですが、再生可能エネルギーが主力発電の国が増えつつある中で、日本のエネルギー計画は、世界から遅れているだけでなく、東京電力福一原発の事故から何も学ぼうとしない姿勢にしか見えません。
2018年5月17日付 しんぶん赤旗

2018年5月14日月曜日

初心忘るべからず

 先日、古い友人と酒を酌み交わす機会があった。その時に、「貴方はブローカーであり、デベロッパーなんだから、リラクゼーション・セラピストなんか似合わない。ブローカー、デベロッパーであるべきだ。」と言われた。私がブローカー(仲買人)だ、デベロッパー(開発者)だという指摘が当たっているのかどうかという疑問が無いわけでもないが、少なくとも彼のいうようにセラピストという柄じゃいないのは間違いない。
 でもね、揺れるんですよ。何とかする自信があって自立したわけだけれど、そう簡単に仕事になるわけも無く、苦戦が続く中で、ふっと魔が差したようで(勿論それだけではないのだけれど)、目先を変えてみようとリラクゼーション・セラピストの研修を受けたのだった。それはそれで面白いのだけれど、何だか自分のやりたいこととはやっぱり違うとも思いながら、実際に、店舗でサービスに携わるようになってもいた。そこに冒頭の話ですよ。
 一寸衝撃を受けたね。やっぱりそうなんだなぁ。自分のやりたいこととは全く別物だよな、ということがすんなり腹落ちした気がした。初心を忘れては行けない。少しうまくいかない時間が続いたくらいで揺らいでちゃ駄目だね。彼と酒を飲みながら素直にそう思ったのだった。
 リラクゼーションのお店の方も、すでにローテーション入りしているので、急に辞めるわけにも行かないがローテーションから外してもらう方向で本部に調整してもらって、遠くない時期に本来自分がめざしていたことに集中できるよう整理しよう。そんな決意をしたのだった。
 持つべきものは良い友だね。忌憚の無い意見をはっきり言ってくれるし、それでいて、いざとなったら力を貸してくれる。なかなか良い時間を過ごさせてくれた友に感謝である。

 さてそこで、私は何をやろうとしているのか、あらためて整理しておきたい。私がめざしたいのは、「地域共同体の再生」である。新自由主義の考え方が日本の政治と経済を動かしている。国家による福祉・公共サービスの縮小、大幅な規制緩和と市場原理主義の重視の中で、日本で何が起っているのかといえば、自由な競争という名で国民の自由が奪われ、ごく少数者への富の集中と、圧倒的多数の国民の貧困化がすすんでいる。国民は一人ひとりに分断され、地域共同体も崩壊してしまった。地域共同体の崩壊が社会保障関係予算の増大につながっていることに気づいた厚労省は、最近になって「我が事、丸ごと」の地域づくりなどと言いはじめているが、元をたどれば国が地域共同体の破壊をすすめてきたのだ。
 私は、長く協同組合に身を置き、協同組合の現代的な課題は何かというようなことをずっと考えてきたが、1980年のレイドロー報告が私にとっては一つのバイブルになっている。彼が提起した「協同組合は未来の歴史を書く資格があるのか?」というテーマは、私にこれからの私の仕事を考える重要なテーマを与えてくれたのだ。
 私は世界の人々が協同することぬきに、未来の歴史は書けないと思っている。かといって世界に向けて、世界中の人々よ団結せよ、連帯せよ、と叫んだところで協同することにはならない。生活圏を同じくする人たちを共同体として再生させていき、その小さな単位の共同体がつながって世界が一つにまとまっていくのだろうと思う。
 めざすは世界が一つになること。そしてそのために、まずは私も暮らすこの町で共同体を再生させること、それが私のやろうとしていることなのだ。あらためてそこを確認し、まずは何からはじめるのか、考えるところからはじめよう。といっても考えているだけでは何も変わらないので、動きながら、考え、方向を見定めて、動きを作り、そしてまた考えるという作業を繰り返しながら、めざすべきものを見失わずにやっていこう。

 何だかそんなことを考えるだけで楽しいじゃないか。

2018年5月7日月曜日

自治体の二層制

 高齢者人口がピークを迎える2040年頃に自治体が抱える行政課題や、その対応策を検討している総務省の「自治体戦略2040構想研究会」は4月26日第一次報告書をまとめ、野田聖子総務相に提出しました。
 日本の総人口は2008年の1 億2,808万人をピークに減少し始め、人口減少のスピードは加速し、国立社会保障・人口問題研究所の出生中位・死亡中位推計(平成 29年推計)によれば、2040年には1億1,092 万人に減少すると試算されています。その頃には毎年90万人程度減少すると見込まれています。
 出生数は、ついに年間 100 万人を下回りました。団塊世代(1947~49年生まれ)が生まれた頃は毎年260万人以上、団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)の頃には毎年200 万人以上の出生数でした。しかし、団塊ジュニア世代に続く第3次ベビーブームは現れませんでした。2017年には出生数94万人まで減少し、2040年には74万人程度にな ると見込まれています。
 高齢化は、三大都市圏を中心に急速に進行します。2015年に3,387万人であった高齢者人口(65歳以上)は、団塊ジュニア世代が全て高齢者となる2042年に3,935万人(高齢化率 36.1%)でピークを迎える見込みとなっています。75歳以上人口はその後 も2054 年まで増加し続ける見込みです。

 報告書は2040年ころにかけて東京・大阪・名古屋を中心とする三大都市圏は急激な高齢化局面に突入するとし、特に東京圏では膨大な医療・介護サービスが必要となり、地方から若者の流入が増えるおそれがあると指摘しています。その一方、中山間地では集落機能維持が困難となるような低密度化が発生するとしています。そのため個々の市町村が行政のフルセット主義を排し、自治体間で連携する必要性を強調しています。
 また、人口減少が先行して進んできた県では、県が市町村と一体に施策を展開する動きが起きていることに触れ、都道府県・市町村の二層制を柔軟化し、それぞれの地域に応じた行政の共通基盤の構築を進めていくことも必要となると述べています。

2018年5月1日付 しんぶん赤旗

被害者全員の救済を

 国策として進めてきた東京電力福一原発で世界でも最悪な過酷事故を起こしてから7年が経ちました。
 早稲田大学災害復興医療人類学研究所の辻内所長は震災支援ネットワーク埼玉などと共同して2012年以来避難者アンケート調査に繰り返し取り組んできました。辻内さんは「現在でも4割を超える人たちがPTSDの可能性があります。しかも、区域外避難(自主避難)をしている人たちも帰還困難区域の方々に匹敵する程の高いストレス状態にあり、絶対に対処しないといけない大きな課題です。」と指摘します。
 辻内さんはどういった要素がPTSDに影響を与えたかを分析しました。原発事故避難者は、事故などの一過性の激しいトラウマ体験が原因の「急性単発型」と、虐待のように繰り返しトラウマ体験にさらされる「慢性反復型」が組み合わさった複合型と見ています。そして、「社会的虐待ともいえる事態です。核心は、政府が住民からの意見をもとに避難すべき区域を決めるのではなく、誰が見ても不合理な帰還区域を決めていること」だと強調します。

 国際放射線防護委員会は緊急事態の時の放射線量を100mSv~20mSvと定め、収束して状況が安定した後の復旧時の放射線量を1mSv~20mSvの範囲で定めるよう勧告していますが、日本政府は復旧時でも20mSvを帰還しても良い基準として設定しました。これは論理的にも整合性のない政治決定で、政権は放射線から自身や子供を守るために避難した被害者に『自主避難者』のレッテルを貼って支援を打ち切ろうとしていますが、これは改めなければなりません。

 「責任は国家にある。」このことを明確にし、被害者全員が救済されるべきであることを忘れてはいけないと思います。

2018年4月26日付 しんぶん赤旗

2018年4月24日火曜日

介護保険の生活援助

 安倍政権は10月からヘルパーが高齢者宅を訪問し、調理や掃除を行う介護保険の生活援助を、一定回数以上利用する場合、ケアマネに市区町村への届け出を義務付けようとしています。明らかに利用制限を狙ったもので、具体化されれば、生活援助を利用する高齢者に大きな影響が出ることは明らかです。

 昨年11月厚労省が公表した生活援助を月90回以上利用している事例の自治体調査によると、その8割は認知症の利用者で、7割は独居でした。買い物に始まって3食の調理、配膳・下膳、服薬確認、掃除、洗濯など生活援助が在宅生活を支えていることがはっきりわかります。自治体は96%の事例を「適切またはやむを得ないサービス利用」と判断していました。この時点で、利用制限を求める根拠は完全に崩れています。
 それにもかかわらず押し切ろうとしている背景には、何が何でも介護給付費を抑えようとする政府の狙いがあります。財政当局の言いなりになった実態に合わない介護保険の改悪だということができます。

 生活援助の平均利用回数にもとづく統計処理上の数字で、届け出基準を決めようとしていますが、特に認知症の場合、個別的な支援が大切で同じ要介護度であってもサービスの必要性は一人ひとり異なります。そのためケアマネがしっかりアセスメントしてケアプランを立てているわけです。それを一律の基準で届け出させること自体、介護保険の趣旨とは相容れないものです。
 しかもケアマネが届け出たケアプランは「地域ケア会議」で検証するとしていますが、ヘルパーも利用者も家族もいない中で検証され、利用制限ということになればケアマネと利用者・家族との信頼関係は損なわれてしまいます。

 利用制限につながる、ケアプラン上の生活援助の利用回数届け出ルールは導入するべきではありません。

2018年4月16日付 しんぶん赤旗
同 しんぶん赤旗


2018年4月23日月曜日

生活保護費削減

 「ただ死んでいないだけの生活になってしまう」…政府が狙う生活保護費削減への不安をこう語るAさんの暮らしぶりは慎ましやかだ。風呂は使わず何日かに一度のシャワー、月に1度の生活保護の利用者や支援者が交流する場に参加することを楽しみに、病気を抱えて療養生活を送っている。Aさんは「保護費が減らされれば、もう削れるのは人と会うための費用くらい。ひたすら節約し命をつなぐだけの生活になってしまう。削減は止めてほしい。」と訴える。

 安倍政権の生活保護費削減計画は、一般低所得世帯の消費支出との比較に基づき、10月から日常生活に充てる生活扶助費を最大5%引き下げ、総額210億円を削減するもの。日弁連貧困問題対策本部の坂田弁護士は、「憲法が否定する劣等処遇の考え方によるものだ。」と批判する。
 劣等処遇とは19Cイギリスの貧困者救済制度で原則とされた救済する人の生活は最下層の労働者以下とするという差別的な考え方で、救済から遠ざけようとするものだ。日本国憲法は第25条で、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有し、国はあらゆる部面でその権利を保障する義務があるとしている。この25条に立ち返り生活保護制度が健康で文化的な生活を保障する仕組みとして機能するよう改善していくことこそが求められている。
2018年4月13日付 しんぶん赤旗

介護事業倒産過去最多

 新聞報道によると、2017年度の老人福祉・介護事業の倒産が介護保険法施行以降で最多の115件に達したことがわかったという。

◆倒産件数 115件(前年度比7.4%増)
・倒産業種ベスト3
 1位 訪問介護事業(47件)
 2位 通所・短期入所事業(44件)
 3位 有料老人ホーム(9件)
・地域別
 1位 関東(39件)
 2位 近畿(22件)
 3位 中部(17件)

◆負債総額 147億4100万円( 同 38.7%増)
 ※負債総額10億円超の大型倒産が4件あり、負債額の大幅増加につながった。
 ※全体では負債1億円未満の倒産が93件で小規模事業者の倒産が大半を占める。

 2015年の介護報酬改定は、2.27%の報酬引き下げが行われており、処遇改善加算を除けば実質約4.5%の大幅引き下げとなっている。その介護報酬大幅引き下げが倒産件数の増加の最大の要因といって良い。

2018年4月13日付 しんぶん赤旗


2018年4月20日金曜日

放送制度改革

 放送制度改革・・・狙いは放送法第4条の撤廃です。放送法第4条は、「政治的公平」、「公安および善良な風俗を害しないこと」、「報道は事実を曲げないですること」、「意見が対立する問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を放送事業者に求めています。
 安倍総理は、朝日新聞を目の敵にしたりして、森友学園・加計学園問題をめぐる報道が気に入らないということを態度で表していますが、この放送制度改革は安倍総理の意向を強く反映したものだと言われており、政府が報道に介入して政権を批判する報道を封じ込めようとする意図があるといわれています。

2018年3月29日付 しんぶん赤旗

 そもそも放送法は、国民を戦争に駆り立てる道具になった戦前の放送事業の教訓をふまえて、同じ過ちを繰り返さないために制定されたものです。放送法第1条には「放送による表現の自由を確保する」とその目的がうたわれています。

 目的を確認したうえで、問題の第4条の規定を見ておきます。

(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条  放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
2  放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。

 この第4条が撤廃された何が起るかといえば、放送における表現の自由や、国民の知る権利が根本から破壊される可能性があるということです。
2018年4月11日付 しんぶん赤旗

 1月31日、楽天等ITやベンチャー企業が主導する新経済連盟の新年会で安倍首相は、「ネットでありますから放送法の規制がかからない。しかし見ている人たちにとっては地上波等と全く同じです。もう日本の法体系が追いついていない。私たちは大きな改革を行わなければいけない。」「改革を進めて行くためにもみなさん、どうかリスクをとってどんどん手を挙げていただきたい。」…気心の知れたIT事業者たちに放送事業に参入してもらい、政権批判ではなく、自分に都合の良い番組を放送して欲しいという狙いが透けてみます。

 森友学園問題、加計学園問題で公文書の改竄までやってのけた安倍政権を応援する事業者が、安倍政権に都合の良い情報を選択して、なおかつ、安倍政権に都合の良い粉飾を加えて番組が編成されるということになったら、国民の知る権利は大きく侵害されることになります。

 私は、インターネット配信される番組にも放送法を適用するように、放送法に少しだけ手を加えれば済む話だと思います。インターネット配信番組にも放送法第4条を適用し、「政治的公平」、「公安および善良な風俗を害しないこと」、「報道は事実を曲げないですること」、「意見が対立する問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を求めて行くことこそ必要なことではないでしょうか。

2018年4月14日土曜日

経済四季報

 経済は世の中の成り立ちの根っこの部分であり、この根っこがしっかりしているかどうかで、大きな幹に育つかどうかが決まる。だからこそ、経済の動きはしっかり見ておく必要がある。新聞などいろんなところが四半期のまとめを出しているが、しんぶん赤旗の『けいざい四季報』が国民の立場で書かれており、一番わかりやすいと思っている。その赤旗が、3月28日から4回に分けて四季報を掲載している。

 2018年第一四半期の世界経済を見ると、アメリカのトランプ大統領の極端な米国第一主義が世界経済を揺さぶり、貿易戦争の勃発が懸念されている。

 22日トランプ大統領は中国がアメリカの知的財産権を侵害しているとして通商法301条に基づく制裁を命じる大統領令に署名した。この301条は、大統領が不公正貿易と判断すれば、一方的に関税引き上げ等の制裁を行うことができるというもの。トランプ大統領は、鉄鋼とアルミニウムの関税をそれぞれ25パーセント、10パーセント引き上げる方針を表明。「中国が不当に安い鉄鋼製品を過剰に供給しているために、米国の鉄鋼業界が損失を受けている」だけでなく、「兵器の製造などにかかわる鉄鋼製品を、海外輸入に依存することは安全保障にかかわる」と強調しているが、中国だけでなくヨーロッパ諸国やカナダ等からも強い懸念と反発を呼んでいる。

 米連邦準備理事会(FRB)は11日、3月20~21日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。それによると、米議会が10年間で1.5兆ドルという大型減税を実現させ、2年間で歳出を3000億ドル増やす予算関連法も成立させたことを評価し、FOMCは「税制改革と予算合意は今後数年の生産高を大きく押し上げそうだ」と指摘。
 停滞していた物価上昇率も、すべての参加者が「今後数カ月で上向く」との見通しを示し、多数が2%のインフレ目標の達成に「自信を深めている」と指摘した。実際、11日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は、エネルギーと食品を除くコア指数が1年ぶりに2%を突破。物価の基調はFRBの見立て通り、上向きつつある。
 ただ、FOMCは米政権が3月に発動した鉄鋼・アルミニウムの関税引き上げを巡って議論。議事要旨には「関税自体は大きな影響を持たないが、報復合戦になれば米経済の下振れリスクになる」と明記した。関税引き上げの景気リスクはそう大きくないが、企業心理の悪化で投資や雇用が下振れするのではないかとの不安を表した。
2018年3月28日付 しんぶん赤旗
IMF(国際通貨基金)は、「世界的に経済活動が安定的に拡大しつつある。」としている。2017年の世界経済成長率は3.7%と試算されているが、秋の成長率予測よりも0.1%ポイント高く、2016年の世界経済成長率と比べて0.05%ポイント高くなった。世界的に広く経済成長が加速しているが、とりわけヨーロッパとアジアで成長率が予測を上回る。2018年と2019年の経済成長率予測はともに0.2%ポイント上方修正され3.9%を見込んでいる。
 上方修正された理由は、世界的に経済成長の勢いが増していることと、アメリカで最近承認された税制改革の影響を反映している。
 アメリカの税制改革(とりわけ法人税減税と、設備投資の即時償却の一時的措置)は、経済活動を活発化させると予測されており、2020年までアメリカの経済成長にプラスの影響があり、その年までの累計で経済を1.2%成長させる効果があるといわれている。しかし、この大方の見方にはある程度の不確実性が伴っている。それは、規定の一部が一時的な性質のものであるため、税制改革は2022年以降の数年間、経済成長を鈍化させる効果があるといわれている。2018‐19年合計の世界GDP成長予測を見ると、今回の上方修正の半分が、アメリカの税制改革が国内GDPや貿易相手国のGDPに与える効果に由来するものになっている。
 その一方で、トランプ政権による鉄鋼・アルミニウムの関税引き上げを念頭に「保護主義的な貿易措置は、景況感や投資活動、雇用に悪影響を及ぼすリスクがある」と注目されている。

 環太平洋連携協に署名した12か国のうちアメリカを除く11か国が8日、「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定」(TPP11)に署名した。TPP11はトランプ政権が離脱を決めたため、発効の見込みが無くなったTPPのほとんど全体を組み込んでいる。TPP11が発効すると、多国籍大企業本位のTPPの中身が実行できる仕組みになっている。ただ、投資家対国家紛争解決(ISDS)条項や、生物製剤のデータ保護期間延長など22項目は、米国のTPP復帰まで凍結される。
2018年3月29日付 しんぶん赤旗
日本経済は約28年ぶりに長いプラス成長を続けいてる。内閣府が発表した2017年10月~12月期の国内総生産は、実質値で年1.6%増と上方修正された。プラス成長は8四半期連続となった。ところが、雇用者報酬は実質値で前期比0.4%減少しました。毎月勤労統計調査では、1月の確定数値では前年比△0.6%となり二か月連続で減少している。
厚生労働省 毎月勤労統計調査
経済は成長しているのに労働者の賃金は低下、労働者は疲弊している。賃金の減少は個人消費の低迷を招き、17年度平均の実質消費支出(二人以上世帯)は、前年比0.3%減少と、4年連続で減少している。
 その一方で、大企業の内部留保は過去最高を更新し、資本金10億円以上の企業の内部留保は419兆円となった。2012年から2017年の5年で比較すると、経常利益は1.55倍、役員報酬は一人当たり1.11倍に伸びている。
 貧富の差は拡大し、超資産家35人の保有総資産額は13兆9700億円に達する一方で、12年から17年までの5年間で金融資産を持たない層は400万世帯も増加している。

 日本品質の信頼が揺らぐ事態が進んだ。神戸製鋼所の不正調査報告書には、目先の利益を追求する経営が受注の成功や納期を最優先する生産至上主義を根付かせたことが記されている。三菱マテリアルのデータ改ざんでは、検査に関わる人員や設備投資が不足し、研修教育が不十分であったことなど、品質保証部門が形骸化していたことが分かった。日本のモノづくりにおける品質の劣化については、以前のブログに書いたとおりだ。 
2018年3月30日付 しんぶん赤旗
仮想通貨流出問題が発生した。仮想通貨がはらむ危険性と課題をあらわにしたが、その一方で、仮想通貨で1億円単位の資産を手にした「億り人」が増えているという現実もある。しかし、1億円の資産といっても、日本円で確定したわけではなく、今マーケット価格で時価評価をしたらそれだけの資産という人がほとんどだ。実現益ではなく、評価益というところがポイントとなる。しかも、確かに資産は増えているが、仮想通貨の価格変動は激しく、もしかしたら一瞬の夢で終わる可能性もある。それなら売却して利益を確定すればいいということになるかというと必ずしもそうはならない。仮想通貨に対する先高観が根強くあって、今売ってしまうと将来の利益を失うことになるかもしれないという不安があり、1億円の評価益を確保した人がそのまま2億円の評価益をめざしてがっちりホールドするということになっている。

 当時の相場で580億円に相当する仮想通貨「NEM」が何者かに不正送金された。犯人側はダークウェブを通して盗んだNEMを交換し、結局、回収できない事態となった。粗雑な管理の間隙を突かれた形だが、私が驚いたのは、コインチェックが盗まれたNEM相当額を全額補償したことだった。仮想通貨を扱うことでそれだけの利益を生むということが信じがたいことだった。仮想通貨は価値の保証のない、実体のない、泡のようなものに見える。その取引だけで交換所には大きな利益が落ちてくるのだとすれば、仮想通貨は何ともいかがわしい感じがして仕方ない。そんな幻に金を払うことに私は躊躇いを覚える。何かをきっかけに、仮想通貨を誰も見向きもしなくなったら、アッという間に無価値なものになる・・・そんな賭けにのるくらいなら、真面目に働いて一日いちにちを大事に生きたほうが良い。仮想通貨は、そんなことを考えるきっかけを私に与えた。
2018年3月31日付 しんぶん赤旗

2018年4月11日水曜日

もんじゅ廃炉計画

 もんじゅは、MOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)を使用し、消費した量以上の燃料を生み出すことのできる高速増殖炉の実用化のための原型炉であり、高速実験炉常陽でのデータを基に建設された、日本で2番目の高速増殖炉です。

 1991年5月18日運転開始、94年4月に初臨界達成後、原子炉の特性を確認し、1995年2月より原子炉出力を段階的に上げる試運転を進めました。原子炉出力約45%での試験のために、原子炉出力を徐々に上昇させる操作を行っている時に、ナトリウム漏えい事故が発生しました。
 中央制御室に「中間熱交換器C2次側出口ナトリウム温度高」という警報、また、同時に火災検知器(煙感知器)も発報しました。さらに1分後、「C2次主冷却系ナトリウム漏えい」という警報が出ました。これは、2次主冷却系Cループの配管室でナトリウムが漏れたことを示しています。しかし、これを過小評価した担当者が通常の手段で原子炉を停止させようとしている最中に複数の検知器から発報があり白煙が増加していることが確認され原子炉の緊急停止が行われました。
 当初その事故を隠蔽しようとしたことから、世間の非難を浴びることになりました。運転再開のための本体工事が2007年に完了(12年もかかったのですね)し、2010年5月6日に2年後の本格運転を目指して運転を再開しましたた。しかし、2010年8月の炉内中継装置落下事故により、再び稼働ができなくなった。2012年に再稼働する予定であったが実現せず、結局、2016年12月21日廃炉が正式決定されました。

 そのもんじゅの廃炉計画が認可され、これから廃炉作業が進みます。詳細は記事を読んでいただきたいと思いますが、廃炉作業全体は30年の長期にわたる作業になり、しかも、使用済みMOX燃料の再処理をどうするのか、処理後どこに廃棄するのか等々まだ決まっていないのです。原子力は人のコントロールできるものではないのですよ。そんなものをベースロード電源に位置付けるなんてことをいつまでやっているつもりなのですかと言いたいです。

2018年3月31日付 しんぶん赤旗


2018年4月9日月曜日

領収書なしで56億円

 今春から値上げになるもの・・
・納豆 卸売価格の10~20%値上げ
・包装米飯 1パック10~60円値上げ
・ハッピーターン 一袋120gから108gに減量、実質10%値上げ
・家庭用小麦 1~4%値上げ(政府の麦価引き上げによる)
・冷凍のパックご飯 1~17%値上げ
・冷凍うどん 3~16%値上げ
・冷凍お好み焼き 6~7%値上げ
・冷凍たこ焼き 7~10%値上げ
・ネスレ珈琲 6~10%値上げ
・メルシャンワイン 3~5%値上げ
・松屋 牛めし等主力商品を10~50円値上げ
・ビール 各社とも約10%の値上げ(業務用中心)
・ネット通販の配送料 10~50%の値上げ

 大企業はそれなりにベアがあったのかもしれませんが、中小企業にまで賃上げの波は届かず、社会保障は軒並み負担強化となり、年金は目減りし、追い打ちをかけるように食糧品の値上げ・・・これでは庶民の懐はさらに厳しくなります。

 そんな中、目を引いたのがこの記事。領収書なしで官房機密費56億円も使ったんだそうですね。このお金、私たちの税金ですよ。私たちには厳しい暮らしを押し付け、官房長官が、その私たちの金を、何に使ったのかもわからないまま56億円も支出しているわけです。領収書が要らないんだから、もしかしたら自分のポケットに入れてしまっても誰にもわからない・・・そんなことが許されていることが信じられないです。

 国民の税金を使うわけですから、領収書なしはいけないでしょう。少なくとも、何時、誰に、何の目的で、いくら渡したのかは記録をし、そして、きちんと公開することが必要だとおもいます。


2018年3月28日水曜日

生涯賃金奴隷

 賃金奴隷・・・いや言葉ですね。それだけで嫌な言葉なのに、「生涯」がついて何だか絶望的な気分になるような表題が気になって読んでみました。

 安倍内閣の「高齢社会対策大綱」が打ち出した年金受給開始の先送りの話でした。記事によると70歳以降に年金受給時期を延期したら受給額を増やせるという選択肢を用意するということのようです。確かに、元気な高齢者が増え、人生100年時代・・・と言われたりするわけで、私も、「生涯現役」「生涯青春」が座右の銘というか、私のライフ・スタイルとでもいえるようなものなので、働けるうちは仕事をしたいと思っています。私は、年齢を理由に何かを制限されたり、年齢を理由に自分で自分の限界を決めたり、そういうことが嫌いなんです。
 でも、そういう人ばかりではないわけで、定年まで働いたら、余生をゆっくり楽しみたいとか、あちらこちらを旅してまわりたいとか、好きな趣味に打ち込みたいとか、いろんな選択肢が用意されなければいけないわけです。30%以上が貯蓄ゼロと言われる時代です。日本国民の中に貧困が広がっているのは間違いないんですよ。それでも世の中に貢献し定年を迎えたら、100年安心の年金制度が待っているとみんな思っているわけです。

 それなのに年金受給開始時期を先送りされたら、もう否が応でも働かなければならないということです。食うに困って働くことを選択せざるを得ない状況を作ろうちうことですね。
 経団連は「高齢者などの労働参加を促していけば、労働力人口の減少を最低限に抑え、潜在成長率へのマイナスインパクトも最小限にとどめることが可能」「高齢者については社会保障制度の支えてに回ってもらう」などと言っています。
 政府にとっても、高齢者を働かせれば低年金に起因する生活保護費の増加を抑制でき、社会保障費を負担する人を増やせるわけで、政府・財界に都合のいい仕組みづくりというわけです。

 軍事費に5兆円を超える国家財政をつぎ込みアメリカから武器を買い、リニア新幹線やダム開発などの無駄な公共事業で財界にもうけさせる、そんな今の国の財政の在り方を見直せば、国民の生涯賃金奴隷化計画などといったものを持ち出さなくても良いわけです。

 人生100年時代、生涯賃金奴隷なんざまっぴらでえぃ!!

 わたしは、そう叫びたい思いに駆られながらこの記事を読み終えたのでした。

2018年3月27日付 しんぶん赤旗

2018年3月26日月曜日

ピラミッド新発見

 密林に眠るマヤ文明の遺跡を発見!ワクワクするニュースが届きました。

 茨城大学の青山教授とアリゾナ大学の猪俣教授を中心とする国際研究グループは2015年、中米グアテマラのマヤ文明の遺跡、セイバル遺跡とその周辺約470平方キロメートルの範囲を航空レーザー測量を実施。

 一帯は熱帯雨林に覆われ、地上から広い範囲を調査することは不可能でしたが、レーザー光は樹木の隙間から地面に到達し、編者行の解析で地表面の情報が得られます。一部を地上から調査したデータを含めて検討した結果、先古典中期から終末期(紀元前1000年~紀元後200年)に造られたEグループと呼ばれる建造物群が11確認されたということです。
 さらに、この時代の別の公共祭祀建造群が14見つかっています。先古典期にはセイバルとその周辺に少なくとも25の儀式の中心地が存在したことになります。

 こうして人類の秘密がまた一つ解き明かされる・・何だか楽しくなります。

2018年3月22日付 しんぶん赤旗

2018年3月19日月曜日

前川さんの授業に介入

 安倍政権の教育介入問題、『文科省から名古屋市教育委員会への要請メール』を見ると、公立中学校の授業の一つに執拗に絡んでくる文科省の対応に違和感を通り越して、教育を政治が統制しようとしているように感じます。

 教育の根幹には基本的人権があります。「基本的人権」とは、言い換えると「自分らしく生きていく権利」ということです。「たとえ100人のうち99人が賛成しても一人に対して犠牲を要求してはならない問題」です。
 国旗国歌法の制定以降、「強制しない」という国会答弁とは裏腹に、全国の学校現場で「君が代」斉唱時に起立しない教職員に対する処分が強化されていきました。この問題は教職員の労働条件(服務規律)の問題だと考えられがちですが、そうではありません。
 この問題の本質は、身を挺して子どもの良心の自由を守ろうとする教師たちを、国や県や教育委員会が、学習指導要綱の「国旗・国家への理解」をたてに抑圧しているということです。何故そんなことをするのかといえば、公教育を通じて、戦前のような「国家への服従と忠誠心を持った国民」を育てようという意図があってのことなのだろうと考えています。そんな教師たちが、子どもや親や社会から顧みられなくなり、孤立していった時、子どもたちの良心の自由を育てるための環境は死に絶えることになるでしょう。

 前川氏の授業に対する文科省の介入は、政治の教育への不介入が大原則の教育基本法に明確に違反しています。しかし、校長や教育委員会がきちんと対応されていて、そこに教育に携わる人たちの誇りを感じることができ、日本の教育現場を頼もしく思いました。
 



2018年3月12日月曜日

東京電力福一原発事故から7年

 東京電力福一原発事故から7年が経ちました。7年前、岡山市内の某事務所でテレビを見ていたら、突然画面にジャガイモを洗うように津波に翻弄される何台もの自家用車が映りました。最初は何が起っているのか理解できませんでしたが、テロップが東北地方で地震がおき、巨大津波が日本列島を襲ったことを報じました。そこで初めて、太平洋プレートに起因する巨大地震が起きたことを理解しました。地震による崩壊、津波による破壊、東京電力の原発事故、東日本の広範囲の地域で甚大な被害が起っている・・私が一番最初にしたことは友人の安否確認でした。私の友人たちに直接の被害がなかったことがせめてものすくいでしたが、刻々と明らかになる被害の実相に、茫然自失するしかなかったことを覚えています。

 あれから7年、全国の原発は再稼働に向けて動き出し、産業界からは原発の新設の話まで出ています。地震列島、火山列島等と呼ばれる日本で、ひとたびシビア・アクシデントが発生すれば、人の力ではコントロールできないことを学んだはずなのに、何でそんなことができるのか私には不思議で仕方ありません。

 そこには、資本主義の本質でもある「今だけ」「自分だけ」「金だけ」の露骨な三だけ主義のみが存在し、今、自分の利益を最大限追求し、金を手にすることに執着する醜い経済競争と、財界のために財界の利益を最大限追求することで、そのおこぼれに預かって生きている薄汚れた政治家の姿を見ることができます。

 彼らはあの事故から何も学んでいないどころか、一層刹那的になったかのように私の眼には映ります。

 福一の溶け落ちた燃料デブリが最近確認できたというニュースが流れましたが、放射線量が高すぎて、その燃料デブリを取り出す方法は残念ながら見つかっていません。除染作業で集められて大量の汚染土等の放射能を含むゴミの入った黒い袋は、大量に野積みされたままです。全国の原発で使用された使用済み核燃料等の処理方法も確立せず、地層処分するという方針が提案されていますが、引き取り手が見つからないままで、どこにも原子力発電を続ける根拠が見つけられません。それでも一つひとつ原発が稼働して行く現状は、まさに身を滅ぼす所業にしか見えません。

 かつて「神の火」と呼ばれた原子力の火は、本当に「神の火」だったんです。「神の火」をコントロールできるのは神のみ、人には「神の火」をコントロールすることはできないのだということを先の震災で学んだのではなかったか・・。資本の呪縛から解放されて、本気で、この地球上の人と他のあらゆる生物が、共に幸福に生存して行くことを考えなければならないのではないか・・そんなことを考えた東北大震災7年目の今日でした。

2018年3月9日金曜日

モノづくり

 日本のモノづくりがあやしい。いつの頃からかそういう思いが強くなった。もちろん真面目にモノづくりに取り組んでいる中小企業の社長さんや、そこで働く名人・達人たちを何人も知っているし、その人たちの仕事ぶりを高く評価しているのだが、私が言いたいことは個別具体的なモノづくりの現場のことではなく、日本のモノづくり全体の雰囲気というか、空気感というか、それがおかしくなったということだ。

 そもそもモノづくりには職人の育成が欠かせない。例えば私の好きなお酒の世界でいえばこんな具合だ。
 ワインのソムリエになろうとしたら、高校を卒業してすぐにブドウづくりを学ぶために農園で働き、3年、4年かけてワインの原料となるブドウのこと、ブドウづくりのことを学ぶことになる。そして一人前のブドウ農家になることができたら次のステップに進む。
 今度は、ブドウからワインを作る醸造家のもとでワインづくりを学ぶ。ブドウが実りワインを作れるのは1年に1シーズンしかないので、ワインづくりを学ぶには最低でも3~5年かかる。
 原料のブドウづくりから始まって、ワインづくりまで最低でも6、7年かけて学び、そしてようやくソムリエの修行に入ることになる。各地のブドウ畑の特徴を覚え、その畑のブドウで醸したワインの性格を知り、そして料理との相性を学ぶ。ソムリエと呼べるのはこうした10年余の努力を怠らなかった人のみ、というわけだ。

 真の職人を育成するためには最低でも10年というスパンで何を経験させ、何を学び、どういう職人に育てるのかという壮大なビジョンが必要というわけだ。鉄から製品を生み出すとすれば鉄そのものを知ることから始めなければならないし、絹織物を作るならば養蚕から学ばなければ、その道の達人にはなれない。原料生産にまで精通して初めて、原料の質の差を技術で埋めることができるようになるし、無理な注文にも応えることのできる技術を身に着けることができる。そういう真のプロフェッショナルがモノづくりの現場にいないこと、あるいは真のプロフェッショナルが評価されないことが、昨今の日本メーカーの品質問題を引き起こす原因になっているのではないか。私はそう思っているのだ。

 グローバルスタンダード、ISO9001、企業ガバナンス、コンプライアンス、こうしたことがそのままカタカナ語で語られているが、本当の意味を知って使っているのか甚だ疑問だ。例えば、ISO9001を入れて、何から何までマニュアル化された。マニュアル通りにやっていればちゃんとした製品が作れる、利用者に快適なサービス提供ができると錯覚するようになった。マニュアルが独り歩きし、マニュアルにないことがおこると、それをカバーするために新しいマニュアルが整備され、どんどんマニュアルが分厚くなっていく。モノづくりが材料をよく見て、そこからモノを作り出していく作業から、マニュアルを見てマニュアルにあてはめる作業に変わった。完成品をみて評価するのではなく、マニュアル通りに生産過程が進んでいったかが重要になる。こうしてモノづくりからモノを作る職人が疎外されていった結果品質事故が起こるのだ。

 新聞の切り抜きにここ数年の品質問題が載っている。何と嘆かわしいことか・・
2018年3月8日付 しんぶん赤旗

2018年3月8日木曜日

量的・質的金融緩和の破綻

 安倍内閣は4月に任期満了を迎える黒田東彦日銀総裁の再任案を示し、量的・質的金融緩和(異次元の金融緩和)を日銀に続行させようとしています。

 そもそも、金融緩和とは何か。わかりやすく言うと、不況局面で景気底上げのために行う金融政策のことで、通貨供給量を増やして資金調達を容易にする政策のことです。2013年4月から導入した量的・質的金融緩和策(異次元緩和)では、従来の政策金利と預金準備率を引き下げて直接的に通貨供給量を増やす量的緩和と同時に、国債等償還までより長期にわたる金融資産やリスク資産の買入れを積極的に行う質的緩和を組み合わせた金融政策が実施されました。
 その際に主張されたのは、「金融緩和によって物価、賃金が上がり、経済の好循環が生まれる」というものでしたが、この5年間の実績はどうだったでしょう。

 異次元緩和で金融市場に大量のお金を供給したことによって、確かに株価は上がりました。日経平均株価は2倍以上に上昇し、大企業とその株主である富裕層に多大な恩恵をもたらしました。
 しかし、その一方で実質賃金は低下し、庶民の暮らしは苦しくなりました。にもかかわらず黒田総裁が異次元緩和に固執するのは「年2%の物価上昇」目標が達成できていないからです。安倍首相も先日の予算委員会で「2%の物価上昇目標はグローバルスタンダードだ」と強調していますが、戦後日本で2%を上回る物価上昇が続いたのは高度経済成長期と70年代の異常な物価高騰、80年代末のバブル経済時代などごく一部にすぎません。
 2年前から続けているマイナス金利政策によって金融市場の金利は0%に近い水準です。銀行の預貸利ざやが年々低下し地域銀行の収益性の低下がおこっています。異次元緩和で日銀が民間銀行から国債を大量に買い込んだ結果、日銀が保有する国債残高は400兆円を超え、国債発行残高の4割を上回るところまで来ています。

 異次元緩和で物価、賃金が上がり、経済の好循環が生まれるという主張は、根拠を失いました。正常な金融政策に戻すことが、今、求められているのではないかと思います。

2018年3月6日付 しんぶん赤旗

※政策金利=日本銀行が一般の銀行に融資する(お金を貸す)際の金利のこと。

※預金準備率=市中金融機関の預金等の債務の一定割合相当額を、通常無利子で中央銀行に強制的に預け入れさせ、その預入れ率すなわち預金準備率(支払準備率)を随時変更することにより、金融機関の現金準備を直接的に増減させ、その信用創造機能をコントロールしようとする通貨調節手段。

2018年3月6日火曜日

医療と介護同時改定

 2018年度政府予算案の大焦点である診療報酬と介護報酬。しんぶん赤旗が取り上げています。
 安倍政権が医療費削減の標的としたのが入院サービスです。急性期病床で最も報酬が高い7対1病床を10対1病床に転換させる仕組みを用意しました。「7対1」の入院基本料の支払い要件を、「入院患者に占める重症者の割合」が「25%以上」から「30%以上」に引き上げられます。「7対1」を維持するためには重症患者の受け入れが必要となり、「もう重症ではない」という理由で早期退院が迫られたり、より重症な患者を選んで入院させるなどの患者の選別が行われる危険性が指摘されています。
 また、テレビ電話を使って受診できる「遠隔診療」への報酬を新設します。医療過疎地域などで歓迎する意見もありますが、直接診療する場合と比べると患者さん状態を把握するための情報が少なくなり、医療の質が担保できないと医療団体が反発しています。

 介護報酬改定では、診療報酬の改定に連動して医療的ケアが必要な患者さんを医療から介護へ押し流す仕組みが盛り込まれました。しかし、看護師やリハビリ専門職の慢性的人手不足は深刻で、医療的ケアを介護側で受け取って大丈夫かという不安があります。
 医療的ケアの必要な要介護者の長期療養・生活施設として『介護医療院』が新設されます。介護療養病床を廃止して転換するとしていますが、医療体制は縮小します。これで医療が必要な要介護者の療養・生活施設としての役割が果たせるのか疑問です。
 訪問介護では生活援助の報酬を抑え、生活援助に特化した担い手づくりで新しい研修制度をスタートするとしていますが、具体的に担い手が集まる保障はありません。
 通所介護は規模の大きな事業所の報酬が大幅に引き下げられます。前回改定でも倒産が急増しましたが、今回の改定はさらに倒産に拍車をかけるのではないかと指摘されています。
 介護職員の処遇改善でも、他産業との賃金格差はわずかに縮まったにすぎず、介護の仕事に魅力を感じて職業として選択する若者が増える状況にはありません。マンパワーの確保は深刻な状況が引き続き継続することになります。
 
2018年3月4日付 しんぶん赤旗


2018年3月1日木曜日

グローバル経済の迷宮 4

 かつて、自動車産業は、日本の製造業と日本経済を支えてきました。しかし、拡大してきたのは海外生産のみです。少し古いですが、グラフを見ると1990年から2014年の推移をみると一目瞭然で、海外生産を1,420万台増やしながら、国内生産は371万台減らしています。今後の経営戦略でも海外生産のみを増やしていく方向です。

 さらに自動車各社の生産システムの改革によって、部品のモジュール化が進み、共通部品やモジュールの組み合わせで、あらゆる車種を生産しようということになっています。従来、一次、二次、三次などの下請けメーカーと一緒に車種ごとに自動車の品質を作り込んできました。モジュール化によって従来よりも桁違いに多い部品やモジュールの供給を下請け企業に求めるようになっており、従来の下請けでは対応できません。自動車産業の下請け企業も、国内企業が切り捨てられ、安い部品を供給する中国企業に変えられてきています。

 自動車製造業の出荷額は52兆円(2014年)で、主要製造業の出荷額の2割を占め、自動車産業の労働者数は雇用労働者の約1割です。「自動車産業は日本の産業を支えるフロントランナー」と言われる所以ですが、今、自動車産業は、下請けも含めて崩壊の危機に直面していると思います。

 国境を越えて、最適地で生産するグローバル企業の経営行動は、本当の意味で、グローバル企業の成長につながるのでしょうか。国民をぼろぼろにし、技術を流出させ、それで企業の繁栄が築かれたとしても、日本の未来は暗澹たるものになってしまうでしょう。国内生産を守り、技術を蓄積し、新しい製造業の姿を創造していくことが日本の製造業全体の大きな課題となっていると思います。


説明を追加2018年2月23日付 しんぶん赤旗

2018年2月28日水曜日

グローバル経済の迷宮 3

 かつて、日本の電機各社は、半導体や情報機器で世界のトップに立っていました。1990年の半導体生産では世界のトップ10に6社が名を連ね、1位から3位を日本企業が占めていました。しかし、一昨年のシャープが買収され、東芝が買収され、NECのパソコンもレノボに吸収されるなど、電機産業は崩壊しつつあるという状況です。

 何故、そんなことになってしまったのか。答えは簡単です。生産を海外に移転する際に、現地で技術指導するわけですが、それにより生産の海外移転だけではなく日本の持っていた技術が海外移転してしまったわけです。国内生産をおろそかにした結果、国内の技術は陳腐化し、新技術の開発では圧倒的な差ができてしまったというわけです。

 技術立国の時代はどこへやら、世界が進化する人工知能(AI)など新たな産業革命のさなかにある中、日本だけが取り残されてしまっている状況です。
 日本は明治維新後、欧米から学ぶことから出発し、技術を改良して魅力的な商品を創ってきました。最近のノーベル賞ラッシュを見ても、日本が発明力で優れていることを物語っています。だとすれば、もう一度モノづくりの原点に立ち返って、新しい研究成果を取り込みながら、安心して使うことのできる良い製品を市場に出すことと真摯に向き合い、新しい時代の要請にこたえる技術者を育成するところからはじめたらどうだろうか。


2018年2月22日付 しんぶん赤旗

グローバル経済の迷宮 2

 海外投資、特に低賃金国への生産移転は、母国の産業空洞化と経済力低下を引き起こします。

 アジアの成長を日本に取りこむ、東アジアに中枢部品を輸出してアジアの生産ネットワークを日本がけん引する、などして始まったアジアへの投資や生産移転ですが、結果を見れば失敗は明らかで、日本だけが成長に取り残されることになりました。
 戦後の高度経済成長の要因を分析し、日本的経営を高く評価した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が発刊されたのは1979年ですが、1990年代に入るころまで世界の国内総生産での日本の地位はアメリカに次いで第2位の位置を占めていました。しかし、2015年には3位に落ち、アメリカのGDPの6割あった日本のGDPはアメリカの2割、2位に躍り出た中国の4割に及ばないというところまで落ち込みました。

 1990年代、アジアに中枢部品を輸出し、アジアの生産ネットワークの拠点としての位置を保っていましたが、2000年代に入ると次々に追い抜かれ、ASEANで最下位となりました。

 生産拠点のアジア地域への移転によって、移転先のアジア諸国の成長に寄与することはできました。しかし、そのおかげで日本国内での生産は業種によっては壊滅的な打撃を受けることとなり、国内総生産の後退だけでなく、貿易面での敗北・貿易収支の赤字化につながっています。


2018年2月21日付 しんぶん赤旗

2018年2月27日火曜日

グローバル経済の迷宮 1

 低コストを求めて海外に生産を移す大企業のグローバル化により、国内の製造業の空洞化が進んでいます。グローバリゼーションは、「社会的あるいは経済的な関連が、旧来の国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大して様々な変化を引き起こす現象」といわれますが、90年代以降グローバル化の名で急速に進展したものの正体は、桁外れの海外投資でした。

 世界の対外直接投資残高は、1985年の0.9兆ドルから1995年の4兆ドル、2005年の12兆ドル、2015年の25兆ドルへと30年間で28倍に異常に膨れ上がりました。先進国の企業がこぞって低賃金国への生産移転を無規律に行った結果です。グローバル化とは多国籍企業が母国を捨てて海外投資を激増させた放恣な企業活動そのもの。だからそれは母国経済に打撃を与え、資本主義の矛盾を大きく拡大しているのです。

 日本でも海外生産が1990年代から増加し始め、2015年には海外生産比率が国内全法人で25%を超し、海外進出企業ベースでは40%近くに増加しています。資本金10億円以上の大企業に限れば海外投資が国内投資を上回るようになっています。海外生産の増加と表裏一体で国内生産が衰退していきます。

 先の平昌オリンピックで下町ボブスレーが話題になりました。町工場の高い技術力を示すはずだったボブスレーのソリが最終的に使われなかったニュースです。選ばれなかったポイントは二つあって、検査を通らなかったことと、他社のソリよりも遅いということ。日本の製造業は、安全で安心して使える高機能の製品を作り出してきた歴史があったわけですよね。それを日本品質と呼んでいた。しかし、産業の空洞化と同時に残念ながら技術の空洞化も起こっているのではないかと思っていた私の考えに根拠を与えるかのように、下町ボブスレーのソリの評価が下されてしまいました。

 記事の中では触れられていませんが、海外投資の急拡大は、日本だけでなく先進国全体の空洞化・衰退、国民の職の喪失、貧困化、そして福祉国家の崩壊を招いているだけでなく、製造業の根幹にかかわる技術水準の劣化を招いてしまっているのではないかと思います。


2018年2月20日付 しんぶん赤旗