そもそも、金融緩和とは何か。わかりやすく言うと、不況局面で景気底上げのために行う金融政策のことで、通貨供給量を増やして資金調達を容易にする政策のことです。2013年4月から導入した量的・質的金融緩和策(異次元緩和)では、従来の政策金利と預金準備率を引き下げて直接的に通貨供給量を増やす量的緩和と同時に、国債等償還までより長期にわたる金融資産やリスク資産の買入れを積極的に行う質的緩和を組み合わせた金融政策が実施されました。
その際に主張されたのは、「金融緩和によって物価、賃金が上がり、経済の好循環が生まれる」というものでしたが、この5年間の実績はどうだったでしょう。
異次元緩和で金融市場に大量のお金を供給したことによって、確かに株価は上がりました。日経平均株価は2倍以上に上昇し、大企業とその株主である富裕層に多大な恩恵をもたらしました。
しかし、その一方で実質賃金は低下し、庶民の暮らしは苦しくなりました。にもかかわらず黒田総裁が異次元緩和に固執するのは「年2%の物価上昇」目標が達成できていないからです。安倍首相も先日の予算委員会で「2%の物価上昇目標はグローバルスタンダードだ」と強調していますが、戦後日本で2%を上回る物価上昇が続いたのは高度経済成長期と70年代の異常な物価高騰、80年代末のバブル経済時代などごく一部にすぎません。
2年前から続けているマイナス金利政策によって金融市場の金利は0%に近い水準です。銀行の預貸利ざやが年々低下し地域銀行の収益性の低下がおこっています。異次元緩和で日銀が民間銀行から国債を大量に買い込んだ結果、日銀が保有する国債残高は400兆円を超え、国債発行残高の4割を上回るところまで来ています。
異次元緩和で物価、賃金が上がり、経済の好循環が生まれるという主張は、根拠を失いました。正常な金融政策に戻すことが、今、求められているのではないかと思います。
2018年3月6日付 しんぶん赤旗 |
※預金準備率=市中金融機関の預金等の債務の一定割合相当額を、通常無利子で中央銀行に強制的に預け入れさせ、その預入れ率すなわち預金準備率(支払準備率)を随時変更することにより、金融機関の現金準備を直接的に増減させ、その信用創造機能をコントロールしようとする通貨調節手段。
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