2018年5月7日月曜日

被害者全員の救済を

 国策として進めてきた東京電力福一原発で世界でも最悪な過酷事故を起こしてから7年が経ちました。
 早稲田大学災害復興医療人類学研究所の辻内所長は震災支援ネットワーク埼玉などと共同して2012年以来避難者アンケート調査に繰り返し取り組んできました。辻内さんは「現在でも4割を超える人たちがPTSDの可能性があります。しかも、区域外避難(自主避難)をしている人たちも帰還困難区域の方々に匹敵する程の高いストレス状態にあり、絶対に対処しないといけない大きな課題です。」と指摘します。
 辻内さんはどういった要素がPTSDに影響を与えたかを分析しました。原発事故避難者は、事故などの一過性の激しいトラウマ体験が原因の「急性単発型」と、虐待のように繰り返しトラウマ体験にさらされる「慢性反復型」が組み合わさった複合型と見ています。そして、「社会的虐待ともいえる事態です。核心は、政府が住民からの意見をもとに避難すべき区域を決めるのではなく、誰が見ても不合理な帰還区域を決めていること」だと強調します。

 国際放射線防護委員会は緊急事態の時の放射線量を100mSv~20mSvと定め、収束して状況が安定した後の復旧時の放射線量を1mSv~20mSvの範囲で定めるよう勧告していますが、日本政府は復旧時でも20mSvを帰還しても良い基準として設定しました。これは論理的にも整合性のない政治決定で、政権は放射線から自身や子供を守るために避難した被害者に『自主避難者』のレッテルを貼って支援を打ち切ろうとしていますが、これは改めなければなりません。

 「責任は国家にある。」このことを明確にし、被害者全員が救済されるべきであることを忘れてはいけないと思います。

2018年4月26日付 しんぶん赤旗

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