2018年2月27日火曜日

グローバル経済の迷宮 1

 低コストを求めて海外に生産を移す大企業のグローバル化により、国内の製造業の空洞化が進んでいます。グローバリゼーションは、「社会的あるいは経済的な関連が、旧来の国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大して様々な変化を引き起こす現象」といわれますが、90年代以降グローバル化の名で急速に進展したものの正体は、桁外れの海外投資でした。

 世界の対外直接投資残高は、1985年の0.9兆ドルから1995年の4兆ドル、2005年の12兆ドル、2015年の25兆ドルへと30年間で28倍に異常に膨れ上がりました。先進国の企業がこぞって低賃金国への生産移転を無規律に行った結果です。グローバル化とは多国籍企業が母国を捨てて海外投資を激増させた放恣な企業活動そのもの。だからそれは母国経済に打撃を与え、資本主義の矛盾を大きく拡大しているのです。

 日本でも海外生産が1990年代から増加し始め、2015年には海外生産比率が国内全法人で25%を超し、海外進出企業ベースでは40%近くに増加しています。資本金10億円以上の大企業に限れば海外投資が国内投資を上回るようになっています。海外生産の増加と表裏一体で国内生産が衰退していきます。

 先の平昌オリンピックで下町ボブスレーが話題になりました。町工場の高い技術力を示すはずだったボブスレーのソリが最終的に使われなかったニュースです。選ばれなかったポイントは二つあって、検査を通らなかったことと、他社のソリよりも遅いということ。日本の製造業は、安全で安心して使える高機能の製品を作り出してきた歴史があったわけですよね。それを日本品質と呼んでいた。しかし、産業の空洞化と同時に残念ながら技術の空洞化も起こっているのではないかと思っていた私の考えに根拠を与えるかのように、下町ボブスレーのソリの評価が下されてしまいました。

 記事の中では触れられていませんが、海外投資の急拡大は、日本だけでなく先進国全体の空洞化・衰退、国民の職の喪失、貧困化、そして福祉国家の崩壊を招いているだけでなく、製造業の根幹にかかわる技術水準の劣化を招いてしまっているのではないかと思います。


2018年2月20日付 しんぶん赤旗

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