2018年6月9日土曜日

台風の速度低下

2018年6月7日付 しんぶん赤旗

 台風やハリケーンなど発達した熱帯低気圧の速度がこの70年ほどの間に大幅に低下していることがわかりました。台風の移動速度が遅い場合、台風のルート上にある地域の降水量が増加することになり、水害の発生や強風によって大きな被害を生むことにつながります。
 アメリカ海洋大気局(NOAA)で天候の研究を行っているジェームズ・コーシン博士が、7日付の科学誌「ネイチャー」に発表したもの。研究チームによると、地球上の熱帯低気圧の移動速度が1949年~2016年にかけて約10%減速しているとのことです。

 コーシン氏らの研究チームは、熱帯低気圧の移動速度が低下している理由について、地球の気候変動が原因であると指摘します。実際、地球温暖化の影響により極の大気が暖かくなっており、熱帯との気圧差が徐々に小さくなってきています。この結果、熱帯から極に向かって流れる風が弱まり、熱帯低気圧の移動速度を減速させているということです。
 また、温暖化によって大気が暖かくなることは、空気中に含まれる水分量も多くなることを意味しており、雨量の増加にもつながります。このため、熱帯低気圧が10%遅くなるだけであっても、実際の雨量は2倍に増える可能性があるとしています。

 このブログでは、温暖化関連の記事を見つけるたびに取り上げていますが、その頻度が増えており、しかも影響の表れ方は、単に天候の変化にとどまらず、漁業や農業への影響をはじめ、人々の暮らしに直接影響を与えるようになっています。「我が亡き後に洪水よ来たれ」という資本主義の利潤追求一本やりのやり方では、地球と人類の共生関係が維持できなくなりつつあることに、もう気がつかないといけません。そうでなければ人類はこの地上で生きていけない状況に追い込まれてしまう、そんな危機感を感じている私なのでした。

東電柏崎刈羽原発 液状化の恐れ

2018年6月6日付 しんぶん赤旗

 原子力規制委員会は12月27日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(新潟県)の安全審査の合格証にあたる「審査書」を正式決定しました。東電福島第1原発事故後に定められた新規制基準に、東電の原発が合格したのは初めてのことです。また、福島第1原発と同じ沸騰水型の合格も震災後初となります。

 再稼働には地元同意などの手続きが残っており、まさに今、新潟県知事選挙が闘われているが、この結果によっては再稼働を許すことになってしまうわけです。

 ところが、今年2月になって、東京電力は、6、7号機の重要施設であるフィルターベントの基礎やガスタービン発電機の基礎、さらに原子炉の冷却水のための水を取り込む取水路が地震時の液状化で損傷する可能性があるとして、補強工事を行う方針を発表しました。特に、フィルターベントは重大事故が起きた時に、原子炉格納容器の圧力を逃がすための設備で、機能を失えば深刻な事態につながります(下図参照)。

出典:原子力規制委員会

 原子力規制委員会の更田委員長は、5月の定例会見で「許可前の審査会合の資料ですでに液状化については触れられ、液状化の可能性があれば対策を取ります、とある。」と述べ、許可後にわかったことではないと説明し、問題はないとしています。
 しかし、それで良いのでしょうか?再稼働を認める判断として、フィルターベントの基礎が地震による液状化で問題が生ずる可能性があることを知っていて、安全審査に合格を出しているわけです。これでは杜撰な審査だと批判されても仕方ないでしょう。
 フィルターベントが機能しないと深刻な事故につながることは、福島第一原発で経験済みなわけですから、同じ過ちにつながる可能性があることを把握した以上、いったん安全審査に合格とした判断を撤回し、少なくとも、液状化対策が済んで問題ないことが確認できるまで、安全という判断をするべきではありません。
 そもそも原子力発電所の再稼働ありきの安全審査となっていることが問題です。安全審査に合格を出すのならば、専門家や住民から疑問や批判が出ない程度にまで詳細に検討するという姿勢を見せなければ、再稼働反対の意見もある中での原発の再稼働は、そう簡単なことではないはずです。

 だからこそ、今争われている新潟県知事選挙で、きっぱりと原子力発電所の再稼働に反対する池田ちかこ候補に頑張ってもらわないといけません。

温暖化の足音

2018年6月3日付 しんぶん赤旗

 気象庁が発表した2018年(平成30年)春(3月~5月)の天候の特徴は以下のとおりです。
〇 全国的に気温がかなり高く、東日本では記録的な高温
 期間を通して暖かい空気に覆われやすかったため、全国的に気温の高い状態が概ね持続し、平均気温はかなり高かった。特に東日本の平年差は+2.0℃で、春としては統計を開始した1946年以降では1位の高温となった。
〇 降水量は北・東・西日本で多く、沖縄・奄美でかなり少なかった
 低気圧の通過時に、南から湿った空気が流れ込みやすかったため、北・東・西日本では降水量が多く、北・東日本日本海側ではかなり多かった。一方、沖縄・奄美では、湿った空気や低気圧の影響を受けにくかったため、かなり少なかった。
出典:気象庁発表資料

〇 日照時間は東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美でかなり多かった
東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美では高気圧に覆われやすく、晴れた日が多かったため、日照時間がかなり多かった。 
出典:気象庁発表資料

 地球表面の大気や海洋の平均温度は「地球の平均気温」または「地上平均気温」と呼ばれ、地球全体の気候の変化を表す指標として用いられています。19世紀から始まった科学的な気温の観測をもとに統計が取られているわけですが、地球の平均気温は1906年から2005年の100年間で0.74℃(誤差は±0.18°C)上昇しており、長期的に上昇傾向にある事は「疑う余地が無い」と評価されています。上昇のペースは20世紀後半以降、加速する傾向が観測されていて、これに原因だと見られる、海水面(海面水位)の上昇や気象の変化が観測され、生態系や人類の活動への悪影響が出始めています。

 確実に温暖化の足音が高くなってきています。今、何とかしないと手遅れになる・・・そんな恐怖をいつも感じているのですが、どうしたら地球上のすべての国で、温暖化防止で足並みをそろえることができるのか、難しい課題ですが、そこに向けて努力し続けることを止めるわけにはいきません。

2018年6月8日金曜日

セシウムボール

2018年6月3日付 しんぶん赤旗

 九州大学の宇都宮聡准教授らの研究チームが東京電力福一原発事故で飛散した高濃度放射性セシウム含有微粒子(セシウムボール)が環境中にどれだけ存在するかを分析できる簡易定量法の開発に成功したらしい。
hい形態と、溶けにくいガラス質のセシウムボールの二種類があり、この分別のため、放射性物質を可視化する「オートラジオグラフィー」という手法を用いて粒子の大きさや放射能を分析し、判別方法を確立した。

 実際に福島の土壌で測定したところ、土壌の放射能の8~38%がセシウムボールによること、セシウムボールが最大で土壌1g当り1,020個存在することが分かった。今後、様々な環境での分布状況や、除染土の汚染状況、自然界での移行挙動を調べるのに役立つのではないかと期待されている。

 原発事故による放射能汚染は、まだまだ解決の道筋も見えない深刻な状態にあるにもかかわらず、放射能汚染の除染で集めた汚染土の再利用が決まったという信じがたいニュースが飛び込んで来たり、実際に放射能に汚染されているのにもかかわらず、風評被害だと大きな声をあげる人がいたり、放射能被害を過小に、あるいはむしろ積極的になかったかのように評価する向きがある中で、セシウムボールの定量検査が簡単にできるようになるのは良いことだ。是非とも、積極的に活用して、放射能汚染しているものは汚染しているものとして、正しく取り扱うためのツールとして役立ってほしいと思う。

赤ちゃん過去最少

2018年6月3日付 しんぶん赤旗

 6月1日、厚生労働省が2017年の人口動態統計を公表しました。一人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す「合計特殊出生率」が1.43となり2年連続で低下、出生数は946,060人で、前年に続いて100万人を割り込み、過去最少を記録しました。
 一方死亡数は、戦後最多の1,340,433人となり、死亡数から出生数を差し引いた自然減は394,373人で過去最大幅となり、人口減少が加速しました。2005年に戦後初めて死亡数が出生数を上回り、2007年以降は11年連続で自然減の幅が拡大しています。

 結婚したカップルは戦後最小の606,863組、平均初婚年齢は男性31.1歳、女性29.4歳で女性の第一子出産時の平均年齢は30.7歳でした。

 少子化対策が重要課題の一つになっているわけですが、それでも、一貫して少子化が進んでいます。今の日本で、結婚し、子どもをもうけるということがいかに難しいかという現実を反映したことなのだと思います。
 貧困の広がり、切り下げられていく社会保障、働く権利が守られない雇用の場、これでは少子化対策に力を入れているとはとても思えません。

2018年6月7日木曜日

CO2濃度、最高を更新

2018年6月1日付 しんぶん赤旗

 気象庁の発表によると、岩手県大船渡市と南鳥島、与那国島で観測した二酸化炭素(Co2)濃度の2017年平均値がいずれも410ppm弱となり、観測史上最高を更新したとのことです。Co2濃度は観測を開始して以来一貫して上昇しており、温暖化などの影響が懸念されます。
 以下は、気象庁の発表から引用です。

 このグラフは、温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)が世界各地の観測データを収集し、それをもとに解析した地球全体の二酸化炭素濃度の経年変化を示しています。地球全体で見ても、濃度が上昇していることが分かります。


 WDCGGが収集したデータをもとに、緯度帯別に平均した大気中の二酸化炭素月平均濃度の経年変化を示します。
 緯度帯別に見ると、相対的に北半球の中・高緯度帯の濃度が高く、南半球では濃度が低くなっています。これは、二酸化炭素の放出源が北半球に多く存在するためです。
 また、春から夏に減少し、夏から翌春にかけて増加する季節変動は、主に陸域の植物活動によるものです。このため、陸域面積の多い北半球では季節変動の振幅が大きく、陸域の面積の少ない南半球では振幅が小さくなっています。

 いずれにしても、二酸化炭素量の増大は地球の温暖化をもたらすと同時に、海流の大循環の流れを変えさらなる温暖化につながっています。二酸化炭素排出量の削減は可及的速やかに取り組まなければならない課題だと私は思います。

2018年6月6日水曜日

個人主義を考える

 最近、個人主義とは何かということを考える機会がありました。困ったときのWikipediaで調べてみると次のように書かれています。

 国家や社会の権威に対して個人の権利と自由を尊重することを主張する立場。あるいは共同体や国家、民族、家の重要性の根拠を個人の尊厳に求め、その権利と義務の発生原理を説く思想。ラテン語のindividuus(不可分なもの)に由来する。対語は、全体主義・集団主義。

 「日本は、欧米の個人主義思想を学んだ。」と言われていますが、本当にそうでしょうか。欧米諸国は地続きで人が行き交う多民族国家です。色んな人種、宗教、文化的な価値観を持つ人たちが集まっているわけですから、一人ひとりの違いを認め合い、自由を尊重し合うこと抜きには集団が成り立たないわけです。そのうえで会社などの組織では、チームワークで仕事を片付けていくということになるわけです。

 ところが日本は島国で、長い歴史の中で互いの常識を「暗黙の了解」で共有できるほど同質性の高い国民です。最近、若い人たちとつきあうと、ちょっと違うかなという感覚を覚えることもありますが、コミュニケーションを多少省略しても分かり合うことができたのです。そこに個人主義という考え方が入ってきたのですが、その時に、誤解が生まれたように思います。多くの日本人が考える個人主義は、実は、利己主義ではないかと私は思うのです。

 例えば、電車やバスを思い描いてみてください。自分も含め、若い人たちが座席に座っています。そこに、足元のおぼつかない高齢者が乗車してきました。誰も席を譲ろうとしません。この席は私が先に座っていたので、私が降りるまでの間、この席は私に占有権がある、この席に座り続けることは私の権利である!というわけです。
 あるいはまた、会社でみんなが残業している場面を想像してください。てきぱきと要領よく実務をこなす人がいる一方で、じっくりと正確性重視で実務を進める人がいて、早く仕事が済む人、時間がかかる人に分かれます。早く済んだ人は、私の担当業務は終了したので、お先に失礼します!といって帰っていきます。自分の仕事を早く終えたので、みんなより先に帰る権利がある!というわけです。

 これらのことは、私は、日本人の利己的な性格の表れだと思うんです。けっして個人主義ではありません。個人主義は集団に所属する一員としての役割や権利をお互いに尊重しあうことであって、一人ひとりが好き勝手にすることとは違います。当事者が解決できない問題で行き詰まっているのであれば、周囲の人間が助けるのが当たり前、そう考えることができるのが欧米での個人主義なのだろうと思います。ところが日本人は個人主義を利己主義のように理解してしまっているようです。

 利己主義を批判する人が、個人主義と称して実は利己的にふるまっている・・・。そんな姿を見るたびに、個人主義を正しく理解していないという思いを強くするのです。