2018年2月28日水曜日

グローバル経済の迷宮 3

 かつて、日本の電機各社は、半導体や情報機器で世界のトップに立っていました。1990年の半導体生産では世界のトップ10に6社が名を連ね、1位から3位を日本企業が占めていました。しかし、一昨年のシャープが買収され、東芝が買収され、NECのパソコンもレノボに吸収されるなど、電機産業は崩壊しつつあるという状況です。

 何故、そんなことになってしまったのか。答えは簡単です。生産を海外に移転する際に、現地で技術指導するわけですが、それにより生産の海外移転だけではなく日本の持っていた技術が海外移転してしまったわけです。国内生産をおろそかにした結果、国内の技術は陳腐化し、新技術の開発では圧倒的な差ができてしまったというわけです。

 技術立国の時代はどこへやら、世界が進化する人工知能(AI)など新たな産業革命のさなかにある中、日本だけが取り残されてしまっている状況です。
 日本は明治維新後、欧米から学ぶことから出発し、技術を改良して魅力的な商品を創ってきました。最近のノーベル賞ラッシュを見ても、日本が発明力で優れていることを物語っています。だとすれば、もう一度モノづくりの原点に立ち返って、新しい研究成果を取り込みながら、安心して使うことのできる良い製品を市場に出すことと真摯に向き合い、新しい時代の要請にこたえる技術者を育成するところからはじめたらどうだろうか。


2018年2月22日付 しんぶん赤旗

グローバル経済の迷宮 2

 海外投資、特に低賃金国への生産移転は、母国の産業空洞化と経済力低下を引き起こします。

 アジアの成長を日本に取りこむ、東アジアに中枢部品を輸出してアジアの生産ネットワークを日本がけん引する、などして始まったアジアへの投資や生産移転ですが、結果を見れば失敗は明らかで、日本だけが成長に取り残されることになりました。
 戦後の高度経済成長の要因を分析し、日本的経営を高く評価した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が発刊されたのは1979年ですが、1990年代に入るころまで世界の国内総生産での日本の地位はアメリカに次いで第2位の位置を占めていました。しかし、2015年には3位に落ち、アメリカのGDPの6割あった日本のGDPはアメリカの2割、2位に躍り出た中国の4割に及ばないというところまで落ち込みました。

 1990年代、アジアに中枢部品を輸出し、アジアの生産ネットワークの拠点としての位置を保っていましたが、2000年代に入ると次々に追い抜かれ、ASEANで最下位となりました。

 生産拠点のアジア地域への移転によって、移転先のアジア諸国の成長に寄与することはできました。しかし、そのおかげで日本国内での生産は業種によっては壊滅的な打撃を受けることとなり、国内総生産の後退だけでなく、貿易面での敗北・貿易収支の赤字化につながっています。


2018年2月21日付 しんぶん赤旗

2018年2月27日火曜日

グローバル経済の迷宮 1

 低コストを求めて海外に生産を移す大企業のグローバル化により、国内の製造業の空洞化が進んでいます。グローバリゼーションは、「社会的あるいは経済的な関連が、旧来の国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大して様々な変化を引き起こす現象」といわれますが、90年代以降グローバル化の名で急速に進展したものの正体は、桁外れの海外投資でした。

 世界の対外直接投資残高は、1985年の0.9兆ドルから1995年の4兆ドル、2005年の12兆ドル、2015年の25兆ドルへと30年間で28倍に異常に膨れ上がりました。先進国の企業がこぞって低賃金国への生産移転を無規律に行った結果です。グローバル化とは多国籍企業が母国を捨てて海外投資を激増させた放恣な企業活動そのもの。だからそれは母国経済に打撃を与え、資本主義の矛盾を大きく拡大しているのです。

 日本でも海外生産が1990年代から増加し始め、2015年には海外生産比率が国内全法人で25%を超し、海外進出企業ベースでは40%近くに増加しています。資本金10億円以上の大企業に限れば海外投資が国内投資を上回るようになっています。海外生産の増加と表裏一体で国内生産が衰退していきます。

 先の平昌オリンピックで下町ボブスレーが話題になりました。町工場の高い技術力を示すはずだったボブスレーのソリが最終的に使われなかったニュースです。選ばれなかったポイントは二つあって、検査を通らなかったことと、他社のソリよりも遅いということ。日本の製造業は、安全で安心して使える高機能の製品を作り出してきた歴史があったわけですよね。それを日本品質と呼んでいた。しかし、産業の空洞化と同時に残念ながら技術の空洞化も起こっているのではないかと思っていた私の考えに根拠を与えるかのように、下町ボブスレーのソリの評価が下されてしまいました。

 記事の中では触れられていませんが、海外投資の急拡大は、日本だけでなく先進国全体の空洞化・衰退、国民の職の喪失、貧困化、そして福祉国家の崩壊を招いているだけでなく、製造業の根幹にかかわる技術水準の劣化を招いてしまっているのではないかと思います。


2018年2月20日付 しんぶん赤旗

2018年2月26日月曜日

今年の介護報酬改定ってどうなの?

 今年4月、診療報酬と介護報酬の同時改定が予定されています。全体としては0.54%のプラス改定となりましたが、本当に介護が良くなるのか、疑問視する声もあがっています。

 国は今回の改定を「団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、国民1人ひとりが状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、『地域包括ケアシステムの推進』、『自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現』、『多様な人材の確保と生産性の向上』、『介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保』を図る。」ためのものだとしています。

 地域包括ケアシステムは、団塊の世代が後期高齢者となる2025年をめどに重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で最後まで自分らしく暮らし続けられるよう、住まい、医療、介護、介護予防、生活支援が一体的に提供される仕組みだというのが政府の建前です。
 介護を必要とする度合いが重度の方が施設に入らずに地域で暮らすためには、定期巡回型訪問介護・看護や小規模多機能型居宅介護、夜間訪問介護などのサービスが十分そろっていなければなりませんが、現状は、定期巡回型サービスの普及は極めて少なく、小規模多機能型事業所の確保もまだまだ足りません。
 国のこの間の介護政策は、医療的ケアが必要な中重度者に重点を絞り、軽度者は介護保険給付外へ誘導していこうという流れでした。これは、介護保険の「自立した日常生活を営むのに必要な給付を行う」という理念に反するものだと言わざるを得ません。

 「統計的に見て通常のケアプランとかけ離れた回数(※)の訪問介護(生活援助中心型)を位置付ける場合には、ケアマネジャーは市町村にケアプランを届け出ることとする。市町村は地域ケア会議の開催等により、届け出られたケアプランの検証を行い、必要に応じ、ケアマネジャーに対し、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、サービス内容の是正を促す。」というルールが導入されます。要するに、利用回数が不適切だという検証結果となったら回数を減らせという是正が求められるということであって、私は、これは「生活援助の回数減らしルール」だと思います。度々是正が求められるとケアマネージャーが自主規制して「生活援助は1日1回」などのカンパニールールも広がりかねないと思います。
※通常のケアプランとかけ離れた回数の判断は、「全国平均利用回数+2標準偏差」を基準として平成30年4月に国が定め、10月から施行するとしています。

 さらに身体介護と生活援助の報酬上の格差が広がったことで、経営が厳しい事業所では多数回利用ができない生活援助は減らして、身体介護に集約する動きがでてきます。生活援助に特化した研修受講で付与される資格が新設されますが、担い手拡大につながるのか、制度として維持できるのか疑問です。すでに、要支援者向けの総合事業によるサービスの担い手について、各自治体が研修制度をスタートしていますが、担い手は広がっていません。というのも、全国で250の自治体でサービスを廃止する意向を示している事業所があることが分かっていて、人材不足と報酬が低すぎて経営的にやれないという状況にあるわけです。
 要介護度軽度の利用者の生活援助については総合事業へ移行する案も検討されているようですが、総合事業によるサービスを提供する事業所が減っていこうとしている中で、政府の思惑通りにはいかないことが予想されます。

 深刻な人手不足をどうするのかという問題があるわけですが、国の方針を見ると、先に見たような簡易な研修制度を新設し資格のハードルを下げることと、介護ロボットや見守りシステム、ICT活用などの省力化をすすめることしかありません。別の仕組みで、外国人技能実習生を介護職員でも導入できるようにしたり、全国的・全産業的労働力不足への対応で、外国人労働者の確保に向けた動きが出てきていますが、文化や価値観の違いがあり、少なくとも、介護現場での即戦力として期待できるようなことにはなりません。

 2018年度介護報酬改定は、報酬引き上げという形を作りましたが、残念ながら、介護を充実させ、職員の処遇が改善され、地域包括ケアシステムが前進するものだとはいえません。
 必要な介護を、必要とするときにはいつでも、大都会だろうが農山村・離島などどこに住んでいても、必要な量のサービスを受け取ることができる仕組みこそが地域包括ケアシステムでなければなりません。

 消費税に反対の立場ですが、消費税収入を社会保障財源に充当するのであれば、これまで法人事業税の減税に使われていた分も含めて社会保障財源に回せば財源は出てきます。あるいは国民が求めているわけでもないリニア新幹線の開発や、肥大化してしまった軍事費を見直すなど、財源を生み出す方法はいくらでもあるわけです。憲法25条に規定する健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を守る立場で、介護サービス等社会保障を充実させ、介護労働者の処遇を改善し、介護の担い手になることを決意する若者を増やす、そういう仕組み作りこそ、今、求められていることではないかと思います。

2018年2月22日木曜日

オリンピック考

 平昌オリンピックについて、あるいは、平昌オリンピックの報道について、様々な意見が出されています。

 一つは、今回のオリンピックが平昌であること、大韓民国で開催されていることに由来する意見です。北朝鮮との合同チームが作られたり、金正恩最高指導者の妹さんが大使として開会式に参加し南北対話に向けた話し合いが行われたり、北朝鮮の美女(?)応援団がにこやかに、そろって韓国及び北朝鮮選手を応援する姿が話題になったり、朝鮮半島の平和への動きが見られるわけですが、曰く「北朝鮮の策謀だ」「核開発に対する国際的な批判をかわすためのものだ」「北朝鮮を参加させるな」等々。
 私は、この間、核開発をめぐって国際的に孤立を深めている北朝鮮がオリンピックに参加するのは良いことだと思います。四年に一度のスポーツの祭典ですから、政治的な対立があったとしてもそのことはいったん何処かに置いておいて、日ごろ鍛えあげてきた技と力をぶつけあう場所に、北朝鮮の選手が参加できるようにするというのは大事なことだと思います。オリンピックへの参加をきっかけにして、政治の世界でも対話が進んで、朝鮮半島に平和が訪れるのだとすれば、それはオリンピックの政治利用ではなく、スポーツを通じて相互理解が進んだことの証と捉えることが重要ではないかと思っています。「スポーツに国境はない。」ということです。
 文大統領が「慰安婦問題は日韓合意では解決しない」と表明したことを受けて国内で韓国への批判が高まっている中で、安倍総理がオリンピックの開会式に行くのかどうかが問題になっていました。政治的な問題は棚上げして、純粋に国際的なスポーツの祭典を楽しめばいいというのが私のスタンスで、安倍総理が開会式に参加して良かったなと思っています。羽生選手や小平選手の金メダルをちゃっかり自身のイメージアップに使っているあたり、さすがに抜け目がないなというか、良い宣伝担当を抱えていらっしゃるなと思いますし、それこそ政治利用ではないですかと言いたい気持ちにもなりますが・・・。

 そしてもう一つは、国内問題をそっちのけでオリンピック報道に明け暮れるマスコミに対する批判です。「国会で重要問題を審議しているのに、一日中オリンピックのことばかりなのはおかしい」「重要法案の審議から国民の目をそらすためにオリンピック報道が利用されている」、果ては「オリンピックを利用して日本のナショナリズムを高揚させようとしている」といったご意見まで。
 私がしんぶん赤旗が良いなと思っているのは、スポーツでは下の切り抜きのような記事をちゃんと取り上げるところなんですが、例えば、全国一発行部数を誇る読売新聞だと、同じこの場面を報道するのでも「6日前の韓国メディアの取材に「『あの選手』と比較しないでほしい。」と小平選手の名を呼ぶことすら避けた。」などという文章がさりげなく挿入されていたりするわけです。
 私もスポーツマンだったのでわかるんですが、切磋琢磨しあう間柄であっても、試合の前はナーバスになるわけです。お互いに今度は勝つぞと気合が入っているわけで、試合の前はある意味対戦相手は敵なわけですから、「あいつと比べるな」となるのは当たり前なんです。4年に一度世界一を決めるオリンピックともなればなおさらです。ボクシングの試合などでもあれだけ殴り合った後でもお互いに敬意を表して肩を抱き合い「良い試合だったね」と喜び合うわけです。小平さんとイ・サンファさんも何度も競い合いながらお互いの実力を認め合い、友情を育んでいったわけですよ。そこに微妙に韓国と日本は違うぞというメッセージをはさみ込んで記事にしている・・などと読んでしまう私に、もしかしたら読売新聞に対する偏見が混じっているかもしれませんが・・・。
 国会の重要問題を報道しない言い訳にオリンピック報道があるのだとすれば、それは問題だと思いますが、四年に一度しかないスポーツの祭典で、自国の選手が頑張る姿を見て素直に感動し、勝っても負けても「よくやった」って褒め称えてあげれば良いんですよ。テレビ番組欄を見ても、けっして一日中オリンピック報道で埋め尽くされているわけでもありませんし、まったくオリンピックを報道しない(できない?)TV局もあるわけで、そんなにおかしなことだとも思わないんですよね。

 それにしても、小平選手のスポーツマンシップに拍手です。 -パチパチ

2018年2月22日付 しんぶん赤旗

2018年2月21日水曜日

米軍F16小川原湖にタンク投機

 20日午前8時40分頃、米空軍三沢基地所属のF16戦闘機が離陸直後エンジンから出火、同機は、基地北側の小川原湖にタンク2本を投棄し、三沢基地に引き返す事故が発生しました。またかという強い憤りを感じます。

 特に、今回は、着陸直後にエンジンから出火したため、着陸時の火災を防ぐ目的で燃料タンクを投棄したため、タンクから燃料が漏れだし、湖を汚染したため、高値で取引されているシジミ漁に大きな影響が出るという問題を生じさせています。

 度重なる米軍機・ヘリコプターの事故に嫌気がさしている国民は多いと思います。ましてや、今回はシジミ漁に出ていた漁師さんがいる湖に燃料タンクを投棄したわけですから、人身事故につながる危険性があったわけで、日本の空を米軍機が自由に飛び回り、その下で日本国民がおびえて暮らすという状態をいい加減になくしてほしいと思うのは当然のことだと思います。

 湖が汚染して、この季節のシジミ漁が全滅となれば、漁で生計を立てていた人たちにとっては死活問題です。さらにこれから先、安心して食すことができるシジミがとれる保証があるのかという問題も残されています。そうした暮らしの問題を含めて、米軍にはきちんと償う義務がありますし、日本政府は、そのことを強くアメリカに要求するとともに、具体的に保証させるまで粘り強く交渉していってもらいたいと思います。

2018年2月21日付 しんぶん赤旗

2018年2月21日付 しんぶん赤旗

2018年2月21日付 しんぶん赤旗

2018年2月21日付 しんぶん赤旗

核兵器廃絶こそ理性的政策

 ドイツで開かれていた『ミュンヘン安全保障会議』が18日閉幕しました。昨年、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が「安全保障を強め、理性的で責任のある唯一の核政策は、核兵器を禁止し廃絶することだ」と明言。「各国が核軍縮にゆるぎない意志を示し、核兵器の禁止を21Cの安定した枠組みとする目標を持たなければならない」と力を込めました。

2018年2月20日付 しんぶん赤旗

 蛇足ながら、何で赤旗の切り抜きばかりなのかと聞かれたので一言。国内問題では、政党の機関紙なので当然のことですが、日本共産党の主張にそって書かれています。したがって、私も含め一人ひとり別の主張を持っている問題もあるのは当然で、違う立場で書かれた新聞があるのは知っていますが、全ての新聞を取るほど資金的に余裕があるわけではありませんので、経済・社会・スポーツ・科学・国際等一番公平でわかりやすいと私が思っている『しんぶん赤旗』を購読しているわけです。したがって、新聞記事のスクラップも今のところ赤旗からということになるわけです。

 東京新聞とか、中国新聞等々、購読したい新聞はあるんですけどね・・・

2018年2月20日火曜日

五輪選手村用地格安売却

 小池都知事、希望の党の失速と歩調を合わせるように、ご自身も失速してしまって、あちらこちらに綻びが出始めていますが、これもその一つ。かなり酷い『事件』です。

 記事にあるように、小池都知事は、大手不動産会社等11社に、東京オリンピックの選手村用地の名目で、東京ドーム3個分近い晴海の土地を、周辺価格の十分の一で譲渡したというわけです。しかも、9割も値引きした上に、その1割を支払いを求めるだけで、残金の支払いは五輪後の2022~23年で良いことになっているというのですから驚きです。しかも、11社中7社に都の幹部12人が天下りしているといいます。「モリカケ問題」と同じような構図で、安倍首相が小池都知事に代わっただけです。

 選手村整備事業を受託した11社の計画では、選手村整備の名目で50階建て超高層マンション2棟を含む23棟、約5,650戸のマンションと商業棟を建設し晴海を巨大マンション地帯に改造する計画です。
 都は、20年五輪の立候補ファイル(12年)で、オリンピック選手村は「都民や国民にとっての永続的なレガシー(遺産)になる」と明記していますが、「公共住宅を一戸も作らない選手村はレガシーとはいえない。」と批判する元幹部もいます。

 計画の見直しが必要だとしていますが、同時に、こんなことを強引に推し進めた小池都知事の責任も問われなければならない事態です。「徹底追及」それが都議会の役割ですよ。都議の皆さんのご奮闘を期待します。

2018年2月19日付 しんぶん赤旗

同 ②

2018年2月17日土曜日

原発輸出

 脱原発の先進国ドイツは、チェルノブイリの事故をきっかけに原発見直しを行い、1989年以降、原子力発電所は新設されていません。また、2000年6月には、政府と電力会社が全ての原子力発電所を廃止するという合意を行っています。そして、運転開始後32年を経過した原発を順次廃止する方針を決定し、実行に移しています。

 国内のエネルギー資源に乏しいイタリアは、原子力発電開発に早くから取り組み、1950年代後半にラティナ(Latina、GCR、21万kW)、ガリリアーノ(Garigliano、BWR、16万kW)、トリノ・ベルチェレッセ(Trino Vercellese、PWR、27万kW)の3基の発電炉が発注され、1965年までに営業運転を開始しました。しかし、地方自治体や環境保護団体による反対運動が強まり、原子力発電所の立地は難航していたところに、チェルノブイリ原発事故が起こり、新規の原子力発電所の建設が凍結されました。さらに、東京電力の福島原発シビア事故をきっかけに、2011年6月、原子力利用再開の是非を問う国民投票が実施され、94.15%が原子力利用再開反対票を投じ、ベルルスコーニ首相は原子力オプションを放棄しました。

 スイスでは1990年の国民投票で2000年までは原子力発電所を建設しないことが決まり、1998年には原子炉5基を閉鎖しています。直接民主制のスイスでは、国の需要案件は国民投票で決めることになっているため、原子力政策についても何度も国民投票が行われています。2016年11月には、国内にある5基の原子力発電所の運転停止時期を早めることの是非を問う国民投票が実施され、54.2%の反対多数で否決されました。しかし、翌2017年5月、スイス国内にある原子力発電所全5基を順次廃止し、再生可能エネルギーの促進と省エネを推進するとする新エネルギー法の国民投票が行われ、賛成58.2%、反対41.8%で可決されました。これにより、スイスでは2050年までに脱原発が実現する見通しとなりました

 こうして世界では脱原発の流れが大きくなりつつある中で、日本は、原発を「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけ、安全性が確認されたものは再稼働をすすめるという方針を策定し、さらに、日本の原子力発電技術を輸出しようという動きを見せています。安倍首相自身がトップ・セールスとして売り込みをかけるという力の入れようです。
 この流れの中で、日立製作所がイギリスでス進める原発新設事業をめぐり、政府が全面的に資金を支援する枠組みが検討されています。

 原発輸出は、設備や部品を輸出するだけでなく、完成後の運営、保守点検を含むパッケージ型のインフラ輸出に変貌しており、巨額な投資が必要なだけでなく、事故が起こった時のリスクを含め採算が取れないと言われています。そこで政府が支援して企業としての採算性を担保しようというわけですが、私企業に国の財政を投入することのおかしさは指摘するまでもないでしょう。
 当然のことながら、原発建設予定地の住民からは反対の声が上がっており、そんな危ない原発を政府が主導して輸出しようとする動き、明らかにおかしいです。

 日立製作所は、東京電力福島原発事故後の2012年11月には、イギリスの原子力会社ホライズン・ニュークリア・パワーを買収し、イギリスの原発事業に足を踏み出しました。翌13年の株主総会では原子力からの撤退を求める意見が出さましたが、中西宏明社長が「(原子力事業を)支えるのが日立の大きな責務だ。」と答弁し反対意見を退けています。
 原子力発電業界は要求している国内の原発新増設が実現せず、原子力人材や技術が後退することに苛立ちを募らせています。そんな中で安倍首相がトップ・セールスとして売り込みに動き、さらに原発輸出に政府保証までつけようというわけですから、大歓迎であることは言うまでもありません。

 原子力の研究まで否定するものではありませんが、放射能を無害化する技術が開発されていない以上、原子力発電は安全・安心の発電方法ではありません。それは今も続く東京電力の原発事故の状況を見れば誰の目にも明らかです。一刻も早く日本政府と、原子力発電産業界が、そのことを真正面から受け止め、原子力発電からの撤退を決意することを期待しています。「我が亡き後に洪水よ来たれ!」ではなく、日本を、地球を未来に残すために、今、何をしなければならないのか真剣に考えなければならない地点に、私たちは立っているのだと思います。

2018年2月16日付 しんぶん赤旗
2018年2月17日付 しんぶん赤旗



2018年2月15日木曜日

大株主の資産2.7倍に ~ 広がる貧困

 アベノミクスの5年間とは直接の因果関係がなく私自身の貧困化が進んでいますが、ここで言いたい貧困化はもう少し大きな意味で、私も含む国民全体に貧困が広がっているという話です。

 記事によると、日銀に事務局を置く金融広報中央委員会の「世帯の金融行動に関するアンケート調査」からの推計で、金融資産を持たない世帯が2012年の1,347万人から2017年の1,748万世帯へと大きく増加しているといいます。2017年1月1日現在の日本の世帯数は、5,747万7,037世帯ですから、実に3割を超える世帯が金融資産無しなんです。

 また、東京都の調査で住居を失いインターネットカフェで寝泊まりしながら生活する人は都内で一日当り4千人いると推計されています。そのうち3千人が派遣・パート・アルバイトなどの不安定就労者と見られています。一晩2千円前後かかるとすれば1か月で6万円程かかる計算になるわけで、それならアパートが借りられそうなものですが、アパートを借りるのに敷金や礼金等の初期費用が掛かりますし、仕事が不安定なのでアパートが借りられないわけです。

 そうした国民に広がる貧困の対極に少数の富める人たちが存在するわけです。大株主上位300人の資産が2.7倍に増えている・・・表の一番上に名前のあるソフトバンクの孫さん、株の配当だけで年に119億円です。正規雇用の労働者が一生涯かけて手にする給与の総額が2億円とすれば、一年間で50人分の生涯賃金以上の株の配当を受け取るわけです。

 私は、「政治の意味は、自由である。」というハンナ・アーレントと同意見を持っています。社会を構成する一人ひとりが自由であること、これが一番大事なことです。こういうと、自由に競争した結果、莫大な金を手にした人がいるのだから、それでいいではないかといわれるんですが、同時に、もう一つ大事なことがあって、それは、「他者の抑圧の上に成立する自由は真の自由ではない。」ということです。そこにこそ政治の役割があって、一つの社会を構成する富める者と貧しき者がともに同じように自由である状態をどう作り出すのかが政治の責務だと考えています。

2018年2月14日付 しんぶん赤旗

仮想通貨ここが問題

 少し前に仮想通貨のことを書いた。そしたら新聞でも取り上げられていたので、ここで保存しておきたい。記事のサイズが大きくて、私のスキャナでは一回で読み込めず、3枚になっている。
 やっぱり問題は、「1.突然無価値になるかもしれないこと」「2.通信技術に詳しい泥棒に盗まれる可能性があること」ですね。

 ちょっと前に、これからは仮想通貨の時代が来るかもしれないと書きましたが、それはないだろうというのがその後の考察の結果です。この記事が考える材料を提供してくれています。
 確かに仮想通貨の便利なところはたくさんあるのかもしれませんが、仮想通貨ではなくて実態のある通貨のほうが、仮想通貨の便利なところを吸収して行って、もっと使いやすくなっていき仮想通貨に頼る(?)必要がなくなるくというのがこれからさきの流れになるのではないでしょうか。私は、現時点ではそれが正しい在り方だと考えています。

しんぶん赤旗2018年2月10日付 ①

しんぶん赤旗 2018年2月10日付 ②

しんぶん赤旗 2018年2月10日付 ③

2018年2月14日水曜日

難病法の軽減廃止

 治療法が確立していない難病患者のうち、一部の疾患患者の医療費負担を軽減する措置が昨年末で廃止されています。しんぶん赤旗がJPAの森代表のインタビュー記事を載せていましたので、ここに保存しておきます。

 難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)施行(2015年(平成27年)1月1日施行)で、従来の特定疾患治療研究事業から難病法による医療費助成へと仕組みが変わりました。特定疾患治療研究事業は、昭和48年4月17日付け衛発第242号公衆衛生局長通知「特定疾患治療研究事業について」に基づき、いわゆる難病のうち特定の疾患について医療の確立、普及を図るとともに、患者の医療費の負担軽減を図ることを目的とする事業で、実施主体は都道府県でした。1972年にベーチェット病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデスおよびスモンの4疾患を対象として発足し、以降対象疾患を徐々に拡大して2009年10月1日現在56疾患が対象となっていました。

 難病法による制度は、難病医療費助成制度、または、特定医療費助成制度と呼ばれます。難病法では「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、難病の患者に対する医療費助成に関して、法定化によりその費用に消費税の収入を充てることができるようにするなど、公平かつ安定的な制度を確立するほか、基本方針の策定、調査及び研究の推進、療養生活環境整備事業の実施等の措置を講ずる。」とその目的が記されています。

 しかし、難病法の最大の問題は、「軽症者については原則として対象外」とされていることと、「軽症の定義が各疾患により異なる」ことです。「重症度分類の基準が厳しくて軽症とは思えない患者さんでも『軽症』とされる方も多い。」と言われています。

 介護保険でも利用者の要介護度判定にあたって軽度化させようという意思が働いているような気がしていますが、難病法でも同じような状況が生まれているのですね。

2018年1月5日付 しんぶん赤旗

ネット上の流言

誰も暴徒を見なかった―同時代人の常識だった「暴動は流言」

「震災直後の朝鮮人虐殺の原因が、『朝鮮人が暴動を起こした』『井戸に毒を入れた』といった流言であったことはよく知られた事実です。ところが『これらは流言ではなく事実だった』と主張する人々がネット上には存在します。つまり、暴動や井戸への投毒は本当にあったというのです。

 もちろんそんなことはありません。実際には、当時も、震災の混乱が収まった頃にはこうした流言を信じる人はいなくなりました。当時の警視庁の報告も、これらが流言であり、事実ではなかったという認識を当然の前提として書かれています。なぜでしょうか。自分の目で『朝鮮人暴徒』を見たという人が誰もいなかったからです。震災の数ヵ月後には『あれはデマだった』というのが、警察などの行政機関を含む同時代人の常識となったのです。」

 私の嫌いな芸人が司会をやっているワイドナショーで、三浦瑠麗氏が「北朝鮮のテロリスト分子が日韓に潜んでいる」と発言、「とりわけ大阪が危険だ」というようなことを言ったわけです。例によって司会の松本某や東野某がそれが真であるかのようなリアクションで報じたわけです。当然批判が出ます。SNSでもこの議論が盛り上がるわけですが、すると必ず出てくるのが流言飛語の類いです。

 関東大震災のときにも「朝鮮人が暴動を起こした」、「井戸に毒を流した」などの噂が真実のように語られたわけです。実際は、朝鮮人の所為にした日本人の震災最中の略奪行為だったりするわけですが、またぞろそれを持ち出して、三浦某を批判する人権擁護派の発言を封じ込めようとする動きが出るわけです。困ったものだと思っていたら、ちゃんとした方がいらっしゃるんですね。朝鮮人暴動騒ぎの総括をこのWebサイトでちゃんとまとめられておりました。

 こういう情報はとても大事です。事実関係を把握していないと、過去にも井戸に毒を流したことがあったではないか、だから三浦某が言うように、静かに眠っている工作員がことが起れば目を覚まし、同じように何かをはじめるのだ。違うというなら過去の報道が間違っているという根拠を示せ!などと絡んできたときに、ついたじろぐわけです。すると、それみたことかとやり込められることになります。だからね、こういう情報は本当に大事なんですよ。

 関東大震災のときは、その流言飛語を信じた民衆による、朝鮮人・あるいは朝鮮人と決めつけられた日本人の虐殺事件にまで発展してしまったわけです。三浦某はそういう歴史を知らなかったのかわかりませんが、この「井戸に毒」デマ流布事件のように、北朝鮮の工作員がたくさん潜入している「大阪がやばい」などと呟き、それを芸人が「えらいこっちゃ」と騒ぐ姿をテレビが報じたわけです。犯人探しが好きな人たちが、近所の外国人の方の中に「スリーパー・セル」と呼ばれる潜入工作員がいるに違いないと探しはじめ、無実の方の謂れのない迫害につながるのではないかという心配があって、三浦某に対してそういうことは迂闊に言ってはいけない、テレビも不用意にそんな番組を流すなという批判が出ているわけです。

 それもこれも、ルーツをたどれば安倍内閣の北朝鮮に対する圧力強化路線なんでしょうね。そこにテレビ芸人の思慮を欠いた「便乗面白ければ良いや的なシナリオ」ができあがり、その方向性でコメントを言ってくれる専門家として三浦某が抜擢されたということではないかと私は思いますけどねぇ〜。

2018年2月13日火曜日

火山の監視 人員不足

  しんぶん赤旗が、火山の監視体制をとりあげた。先日の草津白根山の噴火では、これまで火口ではなかったところから噴火が始まった。生えていた樹木が根っこから吹き飛ばされる様子が録画されていて、それをニュースで取り上げていたが、火山の噴火の凄まじさに驚いたものだ。

 私が中学生のころだっただろうか、浅間山が噴火して、黒い噴煙が太く長く赤城山の上空にまで流れてきて、かなりの量の火山灰が降ったことがあった。教室の掃除が大変だったことを今でも覚えている。

 日本列島は火山帯の上に浮いているようなものだ。何時、思いもよらないところで、新しい噴火があってもおかしくないといったら言い過ぎだろうか。いずれにしても、監視体制はしっかりしてもらわないと、原子力発電所を直撃するような噴火があったら、もうそれだけで広範囲に人が住めなくなってしまうわけだからね。

 ところがその火山観測要因が不足しているというから困ったものだ。草津白根山噴火の教訓に学び、あらためて観測体制の在り方を見直すべきだと思うよ。

2018年2月12日しんぶん赤旗
2018年2月12日 しんぶん赤旗

適菜収さんに聞く

 スクラップブックの代わりに、ブログが使えると思いつき、この間から新聞の切り抜きをアップしている。

 今日のしんぶん赤旗に、適菜さんのインタビュー記事がのっている。「保守でも何でもない安倍氏に憲法を触らせてはいけない」というずばり直球のタイトルが良い。そして、記事の中身も小気味よい。

 確かに、安倍首相は旧来の保守陣営からも厳しい批判が出るほどで、お亡くなりになった野中広務さんは「安倍首相の姿を見ると死んでも死にきれない!」とおっしゃっていましたし、福田元首相も「国家の破滅が近い」と非常に厳しい声をあげています。本来の保守は、先人の判断の集積である伝統を重んじ、「過去を重視しますが、それは未来につなぐためです。」。ところが、安倍首相は国会審議をないがしろにし、憲法解釈を改悪する集団的自衛権の閣議決定、自民党の地盤の一つであった農業を売り渡すTPPを推し進め、種子法を無くして種子を農業資本に売り渡すことを決めていきます。これらの一つひとつは、これまでの自民党が守ってきたものを破壊する行為です。だから自民党の先輩たちからも批判の声が上がっているわけです。
 こうした流れを作るきっかけとなったのが1994年の小選挙区比例代表制の導入だという指摘、私もこのブログで書いたことがありますが、まさにその通りです。
 野党共闘が安倍政権を終わらせる力を持つことが重要なんですが、果たして、野党が本当の意味で団結できるのか、憲法改正論議の真っただ中で、ますますそのことが問われていることだけは間違いありません。
 もちろん、野党共闘がすべてというつもりはありません。何よりも大事なことは、国民の自由な意思であることは、揺らぎようがない私の信念ですから。


2018年2月9日金曜日

地殻・マントル境界掘削

 日米欧の国際掘削チームが、アラビア半島の東端で大昔の海洋プレートを構成していた「地殻」と「マントル」との境界の掘削に成功しました。これで、地球の歴史がまた一つ明らかになりそうです。




2018年2月8日木曜日

緊急事態条項

 緊急事態条項を巡る議論が盛んになっています。あらためて、自民党の憲法草案の規定を確認しておきたいと思います。
 98条は、緊急事態宣言を出すための要件と手続きを定めています。具体的には、法律で定める緊急事態」になったら、閣議決定で「緊急事態の宣言」を出せる(98条1項)と書いてあります。また、緊急事態宣言には、事前又は事後の国会の承認が要求され(98条2項)ます。何げなく読むと、大した提案でないように見えるかもしれないが、この条文はかなり危険ですね。
 まず、緊急事態の定義が法律に委ねられているため、緊急事態宣言の発動要件は極めて曖昧になっています。その上、国会承認は事後でも良いことになっていますから、手続き的な歯止めはかなり緩いと言わざるを得ません。これでは、内閣が緊急事態宣言が必要だと考えさえすれば、かなり恣意的に緊急事態宣言を出せることになってしまいます。

 99条に、緊急事態宣言の効果がまとめられています。
 要件・手続きがこれだけ曖昧で緩いのだから、通常ならば、それによってできることは厳しく限定しておいたほうが良いです。しかし、提案されている緊急事態宣言の効果は、かなり強大なものになっています。
 第一に、緊急事態宣言中、内閣は、「法律と同一の効力を有する政令を制定」できます。つまり、国民の代表である国会の十分な議論を経ずに、国民の権利を制限したり、義務を設定したりすること、あるいは、統治に関わる法律内容を変更することが、内閣の権限でできてしまうということです。例えば、刑事訴訟法の逮捕の要件を内閣限りの判断で変えてしまったり、裁判所法を変える政令を使って、裁判所の権限を奪ったりすることもできることになります。
 第二に、予算の裏付けなしに、「財政上必要な支出その他の処分」を行うことができます。通常ならば、予算の審議を通じて、国会が、行政権が適性に行使されるようチェックしています。しかし、この規定の下では、国会の監視が及ばない中で、不公平に、例えば国有地を内閣総理大臣のお友達が理事長の学校法人に、格安で売り渡すこともできてしまいます。
 第三に、「地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」、つまり、地方自治を内閣の意思で制限できるということですが、これも濫用の危険が大きいといえます。
 例えば、どさくさに紛れて、首相の意に沿わない自治体の長に「辞任の指示」を出すような事態も考えられます。実際、ワイマール憲法下のドイツでは、右翼的な中央政府が、緊急事態条項を使って社会党系のプロイセン政府の指導者を罷免するということが行われています。今の日本に例えると、安倍内閣が、辺野古基地問題で対立する翁長沖縄県知事を罷免するようなことが実際に行われる可能性があるということです。
 第四に、緊急事態中は、基本的人権の「保障」は解除され、「尊重」に止まることになります。つまり、内閣は「人権侵害をしてはいけない」という義務から解かれ、内閣が「どうしても必要だ」と判断しさえすれば、人権侵害が許されることになります。これはかなり深刻な問題です。政府が尊重する範囲でしか報道の自由が確保されず、土地収用などの財産権侵害にも歯止めがかからなくなるかもしれません。

 その危険性を正確に把握しておくことが必要ですね。

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第98条(緊急事態の宣言)
 1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

 2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。

 3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。

 4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

第99条(緊急事態の宣言の効果)
 1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

 2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。

 3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

 4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

2018年2月6日火曜日

日清戦争前史

 19世紀半ばから東アジアは、西洋列強の脅威にさらされました。列強各国の利害関心、また日本、清国、朝鮮の地理と経済条件、政治体制、社会構造などにより、三国への影響は異なるものとなりました。

 大国の清では、広州一港に貿易を限っていました。しかし、アヘン戦争(1839 - 42年)とアロー戦争(1857 - 60年)の結果、多額の賠償金を支払った上に、領土の割譲、11港の開港などを認め、不平等条約を締結せざるを得ませんでした。このため、1860年代から漢人官僚曽国藩、李鴻章等による近代化の試みとして洋務運動が展開され、自国の伝統的な文化と制度を土台にしながら軍事を中心に西洋技術の導入を進めることになりました(中体西用)。したがって、近代化の動きが日本と大きく異なります。たとえば外交は、近隣との宗藩関係(冊封体制)をそのままにし、この関係にない国と条約を結んでいきました。
 日清両国は、1871年(明治4年、同治10年)に日清修好条規を調印したものの、琉球王国の帰属問題が未解決であり、国境が画定していませんでした(1895年、日清戦争の講和条約で国境画定)。

 日本では、アメリカ艦隊の来航(幕末の砲艦外交)を契機に、江戸幕府が開国へと外交政策を転換し、清国同様、西洋列強と不平等条約を締結せざるを得ませんでした。その後、新政府が誕生すると、幕藩体制に代わり、西洋式の近代国家が志向されます。新政府は、内政で中央集権や文明開化や富国強兵などを推進するとともに、外交で条約改正、隣国との国境確定、清・朝鮮との関係再構築(国際法に則った近代的外交関係の樹立)など諸課題に取り組みました。結果的に、日本の近代外交は清の冊封体制と摩擦を起こし、日清戦争でその体制は完全に崩壊することとなります。

 朝鮮では、摂政の大院君も進めた衛正斥邪運動が高まる中、1866年(同治5年)にフランス人宣教師9名などが処刑され(丙寅教獄)、その報復として江華島に侵攻したフランス極東艦隊(軍艦7隻、約1,300人)との交戦にも勝利し、仏を撤退させました(丙寅洋擾)。さらに同年、通商を求めてきたアメリカ武装商船との間で事件が起こりました(ジェネラル・シャーマン号事件)。翌1867年(同治5年)、アメリカ艦隊5隻が朝鮮に派遣され、同事件の損害賠償と条約締結とを要求したものの、朝鮮側の抵抗にあって同艦隊は本国に引き上げざるをえませんでした(辛未洋擾)。大院君は、仏米の両艦隊を退けたことで自信を深め、旧来の外交政策である鎖国と攘夷を続けることになりました。
 しかし、先に見たように江華島事件がおこり、日朝修好条規の締結により鎖国政策が終わりを告げることになります。
 旧来、朝鮮の対外的な安全保障政策は、宗主国の清一辺倒であした。しかし、1882年(明治15年、光緒8年)の壬午事変前後から、清の「保護」に干渉と軍事的圧力が伴うようになると、朝鮮国内で清との関係を見直す動きが出てきました。たとえば、急進的開化派(独立党)は、日本に頼ろうとしてクーデターを起こし失敗しました(甲申政変)。

 清と朝鮮以外の関係各国には、朝鮮情勢の安定化案がいくつかありました。一つは、日本が進めた朝鮮の中立化(多国間で朝鮮の中立を管理)、二つには、一国による朝鮮の単独保護、三つには、複数国による朝鮮の共同保護等がありました。
 さらに、日清両国の軍事力に蹂躙された甲申政変が収束すると、ロシアを軸にした安定化案が出されました(ドイツの漢城駐在副領事ブドラーの朝鮮中立化案、後に露朝密約事件の当事者になるメレンドルフのロシアによる単独保護)。つまり、朝鮮半島を巡る国際情勢は、日清の二国間関係から、ロシアを含めた三国間関係に移行していました。

 そうした動きに反発したのがロシアとグレート・ゲーム※を繰り広げ、その勢力南下を警戒するイギリスでした。イギリスは、もともと天津条約(1885年)のような朝鮮半島の軍事的空白化に不満があり、日・清どちらかによる朝鮮の単独保護ないし共同保護を期待していました。そして、1885年(光緒11年)、アフガニスタンでの紛争をきっかけに、ロシア艦隊による永興湾(元山沖)一帯の占領の機先を制するため、4月15日に巨文島を占領しました。しかし、イギリスの行動により、かえって朝鮮とロシアが接近し(第一次露朝密約事件)、朝鮮情勢は緊迫してしまうことになりました。ロシアはウラジオストク基地保護のために朝鮮半島制圧を意図したのです。
※グレート・ゲーム(英: The Great Game)とは、中央アジアの覇権を巡るイギリス帝国とロシア帝国の敵対関係・戦略的抗争を指す、中央アジアをめぐる情報戦をチェスになぞらえてつけられた名称。イギリス東インド会社の一員であったアーサー・コノリーが1840年にヘンリー・ローリンソン少佐にあてた手紙の中ではじめて命名したといわれる。

 しかし、朝鮮情勢の安定化の3案(中立化、単独保護、共同保護)は、関係各国の利害が一致しなかったため、具体化には至りませんでした。1891年(明治24年)の露仏同盟や、フランス資本の資金援助によるシベリア鉄道建設着工など、ロシアとフランスが接近する中で、イギリスは日本が親英政策を採ると判断し、対日外交を展開します。日清戦争前夜の1894年(明治27年)7月16日、日英通商航海条約に調印し、朝鮮半島への日本の影響力強化を後押しすることになりました。
 しかし、結局のところ朝鮮は、関係各国の勢力が均衡している限り、少なくとも一国の勢力が突出しない限り、実質的に中立状態でした。

名護市長選挙

 先週日曜日の名護市長選挙の投票率は76.92%と前回と比べると0.21%投票率が増えた。当日有権者総数は4万9,372人でそのうち3万7,524人が投票に参加した。ツイッターなどでの白熱ぶりを見ていたら、もっとグッと投票率が上がるのだろうと思っていたのに、ふたを開けてみればほぼ前回並みという結果だった。

 さらに、驚いたのは、新人の渡具知武豊さんの当選という予想だにしない結果となったことだ。いや違う。私自身が稲嶺さんを応援していたこともあり、冷静に戦局を見極める目が曇っていたというべきだろう。客観的にみれば、予想できた事だったのかもしれない。

 では、現職の稲嶺進さんが負けた要因はどこにあるのだろう。

 名護市長選挙に対して、1万人以上の投票を棄権した人が存在する。その意味では、市長選挙へ向けた市民の意識を、必ずしも高めることに成功しなかったこと、それが敗因の一つではないかとみている。

 投票率が前回並みにとどまった要因でもあるが、選挙戦の争点の問題。稲嶺さん陣営は、普天間基地の辺野古への移設反対を争点にした。しかし、相手陣営は公開討論に呼ばれても出て来ず、自民党の大物国会議員を応援に投入し、「争点は基地問題じゃない」「基地問題は国の課題で、名護市民の暮らしの問題こそが市長に問われている」と数々の謀略的なビラ配布も含めて、それこそ徹底的にやった。高校に通う娘さんも一役買って、若者に基地問題ではないという宣伝を徹底した。こうして、争点がそらされたことで、辺野古移設反対が圧倒的な世論であるにもかかわらず、稲嶺さんではなく渡具知さんに投票させることになったのではないか。

 実は、基地問題では稲嶺さんと渡具知さんはほぼ同じことを基本政策として掲げている。渡具知さんのホームページにはこう書いてある。「基地問題に関する基本的な考え方は、日米同盟の重要性は認識しつつも、米軍基地が極端に偏在していることは明らかであり、過重な米軍基地の負担軽減は多くの県民が等しく願うところである。従って、海兵隊の県外・国外への移転を求めます。」どこが違うかと言えば「日米同盟の重要性は認識しつつ」というところくらいで、沖縄への基地の偏在、過重な米軍基地負担軽減、海兵隊の県外・国外への移転、などの主張は、稲嶺さんとほぼ同じ主張となっているのだ。

 稲嶺進さん、本当にいい候補者だと思う。投票の翌日には、小学生が登校する朝の見守りに立っている。それがいつもの光景なのだ。そういうことを淡々とやれる方なのだ。そういうところにひかれて私は稲嶺さんを応援した。だとすれば、私がしなければならなかったのは、基地問題意外の分野で、稲嶺さんを応援することだったのだ。ところが私自身も辺野古移設を止めることしか頭になかった。私自身が「基地問題」で気負っていたことに選挙が終わってから気がついた。応援していたみんながもしかしたらそうだったのではないか。そして、きっと勝てると錯覚してしまった。残念ながら、そこが今回の選挙の敗因だったのではないだろうか。

2018年2月3日土曜日

仮想通貨

 コインチェックが云々・・というニュースを聞いて、自分の財布の中のコインをチェックすると何かが起るのか?何のこと?正直そう思ったのですよ。良くよく聴いてみると、コインチェックというのは仮想通貨の取引所をやっている会社の名前なんですね。そして、その会社の金庫の中から600億円近い仮想通貨が盗まれるという事件が起った、どうやらそういうことらしいのです。

 そして、例によって、調べてみないときが済まない私は、調べるわけです。今まで、あまり気にしてみてこなかったけど、仮想通貨って今どうなっているのかなと疑問に思ったことは、そのままにしないで調べてみることが大事なのです。

 仮想通貨は、法定通貨に対して特定の国家による価値の保証を持たない通貨のことです。ビットコインが有名ですが、仮想通貨にはたくさんの種類があって、ドルや円の取引と同じように、仮想通貨の取引が行われており、その取引所の一つがコインチェックだったわけです。

 では、そもそも仮想通貨とは何か。ヨーロッパ中央銀行は2012年に仮想通貨を「未制御だが、特殊なバーチャルコミュニティで受け入れられた電子マネー」と定義付けました。さらに2014年、欧州銀行監督局は仮想通貨を「デジタルな価値の表現で、中央銀行や公権力に発行されたもの(不換紙幣を含む)でないものの、一般の人にも電子的な取引に使えるものとして受け入れられたもの」と定義付けています。

 日本ではどうかといえば、2016年に成立した新資金決済法の下では、「仮想通貨」は「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」又は「不特定の者を相手方として相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」と定義しました。

 日本では、円という通貨が流通しています。円は、日本銀行が貨幣や紙幣というかたちで発行し、国がその価値を保障しているわけですが、仮想通貨は、利用者による仮想通貨自身への信用によってのみ価値が保証されているわけで、価値の変動を主導するのは利用者自身ということになります。

 例えば、アメリカに仕事や観光で旅をする場合、円をドルに交換します。今日のレートは1ドル=110円です。これは、日本とアメリカの銀行間の為替相場に銀行の手数料等が加味されて決められます。仮想通貨もこれと同じように、円と仮想通貨を交換することで初めて使えるようになります。

 仮想通貨の中で最大の時価総額を持つのがビットコインという仮想通貨で、このビットコインはサトシ・ナカモトを名乗る人物がその仕組みを造り、2009年から運用がはじまっていますが、彼は、正体不明の謎の存在です。そもそもそういう正体不明の人がはじめたというだけで、私は、「これ大丈夫?」と疑問に思うわけですが、それが今や世界を席巻しているわけです。
 話を戻しますが、ビットコインの単位はBTCという単位を使います。今日のBTC/JPYの交換レートは、1BTC=952,000円くらいで刻々と変化してます。これは流通単位としては大きな額になりますので、BTCの下に「Satoshi」という開発者の名前を冠した単位が存在します。1BTC=1億Satoshiという関係にあり、基本的にはこのSatoshiという単位で送金できるということなのですが、システムの都合上546Satoshiが最低取引単位とされています。つまり、952000÷1億×546≒5.2 となりますから、今日のレートでいえば、日本円で5.2円で546Satoshiのビットコインと交換できることになります。
 ただしリアルな通貨ではありませんので、ビットコインを使おうとすると、パソコンやモバイル端末あるいはウェブ上の財布を使ってビットコインの受け渡しを行うことになります。
 ビットコインは電子的な記録ですから、今回のコインチェックのようにネットワーク上のデータを盗まれてしまうというリスクがあるわけです。それを防ぐために、外部ネットワークから隔離された「コールドウォレット」や、送金に複数の秘密鍵が必要なセキュリティー技術「マルチシグ」といった技術が開発されているのですが、コインチェックではそうした安全を確保するための仕組みづくりができていなかったことで、今回の580億円という巨額の資金流出事故が起ってしまったわけです。

 リスクを回避する仕組みを活用し安全性が担保されるならば、仮想通貨は便利です。例えば、先日、中国と日本の貿易をしている会社の方の話を聞いていたら、日本から中国に送金するときの銀行の手数料は1万円を超えるのだそうです。5千円の送金をするのに1万円を超える手数料はばからしいですよね。でも仮想通貨なら手数料無料で送金できる取引所があったりしてやり方次第ではコストをかけずに送金できるようです。これからじょじょに仮想通貨の時代になっていくのかもしれませんね。