一区は自民党の逢沢一郎さんが強かった。共産党、市民共闘の代表として闘った立憲民主党の高井崇志さんは、56千票余りを獲得し健闘したけれど、小選挙区では当選できず比例代表で当選した。岡山県議会の中でも良識派ということで人気のある元県議の蜂谷弘美さんは、小池代表の希望の党からの立候補となったが、希望の党の失速のあおりを受けて得票を伸ばせなかったように見える。逢沢さんは県内ゼネコンの中核を占めるアイサワ工業の現在の社長・逢沢寛人氏の従姉妹にあたり、逢沢グループの強固な地盤を持っている。その盤石の備えを崩すことができなかったことが野党陣営の敗因だ。
一区は、自民党対市民の共闘ということで、私が、岡山県内で一番注目していた選挙区だったのだが、結果は、46.0%の投票率で、有権者の半数にも満たない人しか投票に参加しなかった。投票に参加しなかった人の意見を聞いてみたいと思っているが、逢沢一郎さんの11回連続当選という『強さ』に加え、事前の自公優勢というマスコミ報道を見て、行っても変わらないという諦観が広がったことが低投票率につながっているとみている。もう一つ指摘するとすれば、共産党が立候補を見送って市民共闘の統一候補となった高井崇志さん自身の問題もあったのではないか。
彼は、江田五月さんの秘書から、2007年の参議院選挙で民主党の公認をもらったにもかかわらず、辞退して岡山市長選挙に立候補して落選。いったん民主党を離れ、2009年の衆議院選挙で候補者の公募に合格して再び民主党に入党、選挙区では逢沢さんに敗れるも比例で復活当選した。次の2012年の衆議院議員選挙で民主党から立候補して落選、再び民主党を離れ2014年の衆議院議員選挙では維新の党の公認で出馬し、比例で復活当選した。2016年3月維新の党が民主党と合流し民進党ができたことで、民進党の議員となっていたが、民進党・前原代表の希望の党への押しかけ合流方針で、2017年10月に希望の党に公認申請したが蜂谷さんが公認され、政策もあわないということで立憲民主党からの立候補となった。
高井さんは軸がぶれまくっている。民主党を出たり入ったり、落選したら維新の党へ行き、小池旋風に乗って当選しようと希望の党に公認申請したが政策が合わないと「排除」され、立憲民主党から立候補するという経過を見ていると信頼性が揺らぐ。そこが市民の共闘・立憲民主党の追い風・共産党の基礎票をもらいながらも得票を伸ばせなかった原因ではないのか。高井さんは、当選確定後のインタビューに答えて「小選挙区で勝たなければ」と発言していたが、安倍政権を許すのかどうかの選挙だったとすれば、まさにその通りだったんですよ。
普段の活動を通じて市民の統一候補を選ぶことができていたら、もう少し違った選挙になったのではないかと思いますよ。それができなかったことがこの結果につながったと思いますね。
岡山一区 | 得票数 | 相対得票率 | 絶対得票率 |
逢沢一郎 | 87,272 | 52.7% | 24.2% |
高井崇志 | 56,757 | 34.3% | 15.8% |
蜂谷弘美 | 21,551 | 13.0% | 6.0% |
計 | 165,580 | 有権者数 | 359,920 |
岡山二区は、投票率48.8%で一区同様投票率が過半数を下回った。二区では、憲法改正(改悪)に反対は、共産党の垣内京美さんだけで、他の3人はいずれも改憲勢力という構図になっていて、憲法改正の是非を問うということを争点にした選挙戦に持ち込めるかどうかが鍵だった。私も垣内さんの候補者カーでアナウンサーをさせていただいたが、もっと憲法問題での立場の違いを鮮明にしきれなかったかと残念に思っている。
あとは、津村さんですね。「リベラリストでありたい」、「古い政治のリセット」、「旧来のしがらみを脱した政治」を目指すなどと公約に掲げているが、利権まみれの原発再稼働を容認し、国内消費が冷え込んでいる状態の中で消費税10%増税を主張していますが、その一方で法人税率の引き下げが行われ、結局、消費税率の引き上げが税収を増やすことになっていないことについては見て見ぬふりでは、古い政治(保守党)の体質そのままだと批判されても仕方ない。こうなると自民党の山下さんとの違いがわからない主張になってしまって、現職有利で小選挙区では敗退、比例で復活するということになった。
二区では、山下貴司さんが安定した強さを持っている。父親の山下一盛氏が山下一盛法律事務所を開業、現在は、おかやま番町法律事務所を開設して法務全般に対応する弁護士事務所として存在感を示しており、山下さんはその長男として生まれ父親同様東大法学部から検事となった。そして2012年の衆議院議員選挙で自民党から出馬、現職の津村啓介さんを破って初当選している。今回の選挙で勝って、これで津村さんには3連勝となったが、私は山下さんとはほとんど縁がなく、強さの秘密がどこにあるのか未だによくわからないというのが正直なところ。
とはいえ、山下さんも絶対得票率は24.9%にすぎず、全有権者の4人に一人の支持で当選しているに過ぎない。ここに一人を選ぶ小選挙区の、民意を反映できないという性質が良く表れていると思う。
岡山二区 | 得票数 | 相対得票率 | 絶対得票率 |
山下貴司 | 73,150 | 51.1% | 24.9% |
津村啓介 | 54,591 | 38.2% | 18.6% |
垣内京美 | 13,518 | 9.4% | 4.6% |
田部雄治 | 1,793 | 1.3% | 0.6% |
計 | 143,052 | 有権者数 | 293,432 |
岡山三区は、県内では最も投票率が高く54.1%だったが、それでもやっと過半数を超えたくらいの投票率にすぎない。当選した阿部さんは相対得票率で38.9%、絶対得票率では21.1%の得票で当選した。次点の平沼正二郎氏は、平沼赳夫氏の引退にともなって父の跡を継いで立候補した。平沼赳夫氏の地盤を引き継げば、当然、息子の正二郎氏が当選するのだろうと思っていたら、阿部俊子さんに競り負けた格好になった。阿部さんは当選後のインタビューで「返済しなくても良い奨学金」、「中間産地の声を国会に届ける」等と発言、そこだけ聞いていたら共産党の主張かと思うくらいだが、そういう「政治は国民のもの」という阿部さんの政治へのスタンスが評価された。当選したからには、その言葉通りに頑張っていただきたい。三区が他の選挙区と比べて投票率が高かったのは、阿部さん、平沼さんが競い合った結果だと思われる。
共産党は尾崎宏子さんを擁立して選挙戦を闘ったが、もともと平沼赳夫さんという圧倒的に強い方いて、その地盤を切りくず闘いはできなかった。やっぱり、名前を知ってもらうことや地盤を築いていくためには、選挙前に準備するのではなくて、早速今日からでも次の衆議院選挙に向けて、地道な政治活動・地域活動をスタートするべきだと思う。そういう努力なしには強い保守の地盤を切り崩して野党が小選挙区で勝つのは困難だよね。
岡山三区 | 得票数 | 相対得票率 | 絶対得票率 |
阿部俊子 | 59,488 | 38.9% | 21.1% |
平沼正二郎 | 55,947 | 36.6% | 19.8% |
尾崎宏子 | 15,424 | 10.1% | 5.5% |
内山晃 | 21,970 | 14.4% | 7.8% |
計 | 152,829 | 有権者数 | 282,569 |
岡山四区は、投票率は県内で2番目に低い47.1%。小選挙区で橋本岳さんを破って当選したこともある柚木道義さんと、橋本龍太郎さんの息子の橋本岳さんという強い二人がいて、この二人を破って当選できる人を担ぎ出すのが厳しく、ほぼ一騎打ちという状況が続いている。三区のようにもっと競り合えば投票率も上がったのだろうが、柚木さんが自民党に近い希望の党に行ったため、どっちでも同じようなもんだという空気が広がったのではないかとみている。
柚木氏は民進党が希望の党への押しかけ合流を決める前日に前原代表に「衆院選で希望の党を含めた野党連携を進めるため、発展的解党と新党設立も視野」に入れるよう申し入れた経緯もあり民進党解党の立役者の一人といっても良い。柚木氏の政治家としての立ち位置も何だかふらついているように見える。集団的自衛権に反対していたため、2015年の安保法の衆院採決の際に玉木雄一郎氏、辻元清美氏、大串博志氏、宮崎岳志氏、泉健太氏らとプラカードを掲げて猛反対する姿が印象的だったが、希望の党から立候補した。そのため、当選するためなら主義主張を変える人・・・そんな風に見られてしまったのではないか。だから負けた。そういうことだね。もっとも、柚木氏の父親は元自衛官で、弟も自衛隊にいるということなので、もともと憲法9条改憲派で本音で希望の党に参加したのかもしれないけど、その辺りの事情は本人に聞いてみないとわからない。
岡山四区 | 得票数 | 相対得票率 | 絶対得票率 |
橋本岳 | 93,172 | 51.9% | 24.5% |
柚木道義 | 72,280 | 40.3% | 19.0% |
平林明成 | 13,907 | 7.8% | 3.7% |
計 | 179,359 | 有権者数 | 380,688 |
岡山五区は、投票率51.4%で、圧倒的に加藤勝信さんが強かった。加藤さんが現職の大臣だし、樽井氏は岡山三区で立候補し平沼赳夫さんに大差で敗れ、大阪16区で公明党の北側一雄さんに敗れたが比例で復活当選、次の選挙で大阪16区で敗れ、唐突に渋谷区長選に立候補して敗れる等の経験をして今回岡山5区に立候補した人だ。この方も、こんなにあちらこちらとふらふらしていたのでは当選は難しい。
加藤さんは相対得票率で70%を超える票を集め、絶対得票率でも36.6%かなり高い得票を集めた。加藤六月さんの娘婿で、六月さんの地盤・看板・鞄を引き継ぎ、三拍子そろったその底力はさすがといえる。
5の小選挙区のすべて自民党という結果に終わって、もちろん選挙制度の問題があるにしろ、あらためて自民党という政党の懐の深さを思い知ることになった。今の選挙制度に問題があることは間違いないけれど、その選挙制度を変えようとしたら、今の、小選挙区で勝たなければならないわけだ。その力を野党と市民の共闘で全国に作り出さなければ、本当に政治を変えるということにはならない。さあ、今日からまた『次』に向けて取り組みを始めよう。
岡山五区 | 得票数 | 相対得票率 | 絶対得票率 |
加藤勝信 | 100,708 | 71.3% | 36.6% |
樽井良和 | 26,901 | 19.0% | 9.8% |
美見芳明 | 13,649 | 9.7% | 5.0% |
計 | 141,258 | 有権者数 | 275,016 |
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