日本の各種選挙の投票率の低さを憂いている私が、すごいなあと思っている国があります。それがスウェーデンなんですが、私が労働組合の専従をしていた1985年にスウェーデンの投票率が90%を割ったことがありました。その時に、マスコミは一斉に「民主主義の危機だ!」という大キャンペーンを貼りました。残念ながら、その次の選挙もさらに低下し86%と落ち込み、2002年の総選挙では80.1%まで落ち込みます。しかし、ここのところ投票率は上昇傾向で、直近の2014年の選挙では85.8%にまで回復しています。
私がすごいと思ったのは、選挙に参加しない=民主主義の危機として、国民の政治への参加をマスコミも、教育現場も、いろんな形で追求したことです。そうした努力が投票率の低下傾向から2002年以降上昇に転じた理由ではないかと思います。
まず、スウェーデンは王室があり、日本同様議院内閣制を採用しています。議会は一院制で国会議員の数は349人。全国を29のブロックに分けた比例代表制が採用されており、300議席が29ブロックに割り振られ、49議席は全国の得票率に応じて分配されます。この仕組みは、小選挙区制と違って民意を反映しやすいため、自ずと政治への参加意識が高くなるといえます。
加えて、選挙キャンペーンをメディアが集中的に報道し、党首討論や政策ディベート等、政策論戦のテレビ・ラジオ番組が組まれ、有権者の関心を惹きつける役割をマスコミが果たしていることがあります。
三つ目に教育です。スウェーデンの学生は国際的にみても民主主義に関する高い知識とその価値感への支持率が高いといわれています。それは、多くの学校で、ディベートや民主主義のプロジェクト活動を推進する事で生徒の政治への興味を高めるなどの努力が続けられているからです。18歳~29歳の若者の政党への参加率は4%もあり、「19歳で国会議員になる」若者が生まれることもあります。
四つ目が政治への信頼の高さです。ヨーロッパの国々が経済危機や財政危機にさらされてきた中、スウェーデン政府が歳入・歳出をきちんと管理して盤石な財政を維持し、マクロ的な経済不安を払拭してきたことで国民の信頼感が高まっています。
ふりかえって日本を見ると、党利党略で小選挙区制を採用し、多くの死票が出る仕組みを作ったことで政治への関心が薄れていき、学校教育の中で憲法教育がなおざりにされ、民主主義と政治参加への大切さが教えられず、マスコミ各社は首相との会食で骨抜きにされ、社会保障が切り捨てられていく、政治家はといえば国民生活の疲弊をよそに私利私欲で動いているさまを見せつけられては政治への信頼など生まれるわけもなく、なんともいえない閉塞状態にあるような気がしますね。
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