2017年11月15日水曜日

横綱の暴行事件

 大相撲横綱の日馬富士が、貴乃花部屋の貴ノ岩に暴行を加えていた事件が、マスコミを賑わせてます。相撲界では稽古と称した虐めや暴力事件が後を絶ちません。

 21Cに入ってからの暴力事件を拾い上げてみました。
◆2006年7月場所 大嶽部屋の露鵬が九重部屋の千代大海との一戦後、土俵の決着を土俵外に持ち出し口論となり、風呂場のガラスを割り、厳重注意を受けた後、カメラマンに暴行を加え、3日間の出場停止処分となりました。
◆2007年6月 新弟子として時津風部屋に入門した当時17歳の時太山が稽古時間中に心肺停止状態となり、搬送先の犬山中央病院で約1時間後に死亡が確認される事件が起こりました。時太山が人間関係や稽古の厳しさから脱走、それに腹を立てた親方がビール瓶で殴打し、「可愛がってやれ」と指示。集団暴行により時太山が死亡しています。時津風親方は部屋持ち親方としては史上初の解雇処分を受けました。
◆2007年6月 武蔵川部屋の山分親方が、ちゃんこ番の元力士の男性が新弟子を虐めているのを正そうとビールケースの上で蹲踞をさせてダンベルを持たせたり、ぶつかり稽古をさせて「当たりが弱い」と箒の柄の部分で両腕を繰り返し殴り2週間の怪我をさせ、書類送検されました。
◆2008年1月 陸奥部屋の十両豊桜が序の口力士の頭を調理器具のお玉で繰り返し殴打、8針(7cm)縫う怪我を負わせ、書類送検されました。
◆2008年5月 間垣親方が朝稽古で「やってはいけないことをやった」ことを理由に竹刀で太腿や顔、手の甲を叩き1週間の怪我を負わせ、相撲協会から減俸処分を受けています。
◆2010年1月 横綱朝青龍が場所中に深夜のスナックで泥酔。一般男性を殴り怪我を負わせ、横綱審議委員から横綱としては初めて引退勧告を受けました。相撲協会からの事情聴取後、突然引退を表明し新聞号外が出るなど話題を集めました。
◆2015年7月 宮城野部屋の熊ヶ谷親方が仕事上のミスを理由にマネージャーに対して、金属バットで尻を殴り、腕などをすりこ木や金づちで叩くなど暴行を加え、怪我を負わせ書類送検、相撲協会を解雇されました。
◆2017年10月 横綱日馬富士が、同じモンゴル出身の貴ノ岩に「兄弟子に対するあいさつが足りない」と説教中、貴ノ岩の携帯が鳴り操作しようとした貴ノ岩に腹を立ててビール瓶で殴打、さらに素手で何十回と殴り続けた・・・という事件が起こりました。

 暴力事件以外にも野球賭博に大麻事件、暴力団との関係等々いろんなことがありました。その都度、反省・謝罪会見が行われ、調査委員会が設置されたり改善の努力が行われ、改善される事が期待されてきましたが、ここへきて横綱日馬富士のビール瓶殴打事件が起こりました。
 相撲協会には自浄作用が働かないのか?という疑問がわいてきます。私は、相撲界の成り立ちがそうさせている側面が否めないと考えています。一つには、早い子は、中学校卒業で相撲部屋に入り、住み込みで稽古、稽古の相撲漬けの生活おくることになり、社会人としての知恵や知識を学びながら人間性を育んでいくという成長機会が損なわれていることがあげられるのではないでしょうか。
 そして、もう一つが、横綱を頂点とした厳然たるヒエラルキーの存在です。勝負の世界である以上、強い者の位が上になるのは仕方ないとしても、その相撲という勝負の世界の序列が、人格を含めた人間の序列になってしまっているのではないかと思うのです。例えば、関取(十両以上)になると付き人がつき、荷物を運んだり、廻しのつけ外し、テーピング、風呂で体を洗う、洗濯、ちゃんこ番と身の回りのこと全てを片付けてくれます。従順に我が儘を聞いてくれる付き人が、横綱ともなれば一人、二人ではなく、10人くらいつくわけです。そこで、自分はえらい、付き人は何でも自分の言うとおりになる、言うことを聞かないのはおかしい、力づくで言うことを聞かせても良い・・・といった勘違いが起こるのではないかと思うんです。
 こうして強くなって(横綱を目指して)、上にあがっていくことに絶対的な価値があるという価値観が醸成されることで、そのためには手段を択ばないといった考え方が生まれ、そこに稽古という名の虐めや、上の者の暴君のような振る舞いを是認する風土が生まれているのではないかと思います。
 大相撲は日本の国技であり、歴史も古いスポーツです。昔からの伝統を大切にしながらも、科学的な稽古と民主的な部屋の管理運営、人間的な成長を保障するための社会教育への取り組みなどが求められているのではないでしょうかね。そういう努力なしには、相撲界の体質は変えられないような気がします。

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