先日、僕の愛機を紹介した際に、木村伊兵衛さんのことを一寸書いた。そしたら思い出したことがあった。「でっこま・ひっこま」論という奴だ。若かりし頃の僕は、ちょっと写真を撮って飯を食った時期があったくらい写真好き、カメラ好きで、最盛期にはカメラ・ボディ25台くらい持ち、レンズはおそらくその3倍くらいの本数があった。で、レンズの評価をするのに、自分でも平面チャートを撮って比較したりしてたんだけど、あるとき木村伊兵衛さんの「でっこま・ひっこま」論という奴に出会った。
レンズには必ず出っぱっているところと引っ込んでいるところがある。だから、平坦性が悪くピント位置が定まらない。ピント位置が少しでも移動すると真ん中が良くなる。そしてまた一寸動いただけで、今度は外側が良くなったりする。レンズは立体物を撮るのだから、平面チャートで撮って数値を問うてみても、レンズの善し悪しはそれだけでわかるものではない・・・といような話だった。
この話を聞いて、目から鱗が落ちたような気がしたんだね。レンズは立体物を撮るのだから、平面チャートを撮影してそこで得られた数値で「このレンズは中心がシャープだけど、中央周辺はソフトで、隅はまたシャープになる」などと評価してみても、実際に写真を撮った時に、中央周辺がソフトだとは限らない。平面チャートの評価と実際の写真に必ずしも相関関係がないということは経験していたので、でっこま・ひっこま論が妙に腹に落ちたのだった。
写真で飯を食えるほどの才能はなく、趣味で撮り続けてきただけのことなのだけれど、それ以後、レンズの評価などという大それたことは二度としなくなった。
今でも、ヤシカマット124Gという6×6判、ライカM3、オリンパスOM−1と3台の フィルムカメラを持っているけれど、持ち出すことはほとんどなくなっちゃったなぁ。デジタル一眼レフもオリンパスのE−3があるけど、これも殆ど出番無し。たまにはフィルムカメラを引っ張り出して真面目に写真を撮ってみるかと思う今日この頃なのだ。
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