2017年12月29日金曜日

貴乃花親方理事降格

 貴乃花親方の理事解任を相撲協会の理事会が決めた。貴乃花親方はむしろ被害者側なのに、加害者側である伊勢の浜親方と同じ処分では重すぎるのではないかという論調が多いような気がするが、それは違うだろうということで一寸書いておきたい。

 鳥取巡業は巡業部長である貴乃花親方が全体の責任者として帯同していた。その巡業先で力士同士の喧嘩が起った。単なる喧嘩で済ませることができる範囲を超え、被害者は頭頂部に9針縫うほどの裂傷を負った。部屋の親方としては警察に被害届を出したことは間違ったとは思わない。しかし、もう一方の巡業部長という立場でいえば、当然のこととして相撲協会に正直に報告するべきだった。

 貴乃花親方が相撲協会に不信感を抱いていたとされているがそんなことは関係ない。貴乃花親方自身協会の理事であり、相撲協会の意思決定に加わっている一人なのだ。警察に被害届を出しているわけだから、警察の捜査が進めば何が問題なのかは自ずと明らかになる。相撲協会が曖昧な解決をめざしたところでそれはできない相談なのだ。だからこそ、貴乃花親方は自分の把握している出来事を正直に報告するべきだった。相撲協会が有耶無耶にする恐れがあると感じたのなら文書で提出すれば良い。いざとなったらその文書をマスコミに提供して取り上げてもらう等やり方はいくらでもある。

 私は、事件の端緒から貴乃花親方の協会理事・巡業部長としての責任放棄がこの事件の処理をズルズルと長引かせた直接の原因だと考えている。

 例えば、東京本社の全国的に有名な大企業が、鳥取県への営業活動に、営業本部をあげて、いくつもある課の課長とそのスタッフの参加する大きな営業チームを編成し、その責任者として常務を帯同させたわけですよ。そこで課ごとの縦割りではなく、例えば鳥取県人会のような宴席で大げんかが勃発して、警察ザタになった。全国的に名前の売れている会社だから事が公になると他の県での営業にも影響が出るわけだから、当然本社に、取締役会に報告し、警察の捜査と同時に社内でも真相究明委員会を設置しようということになる。ところが、常務からの報告はなく、警察からの連絡で本社は初めて事件の重大さを認識し、真相究明委員会を設置した。
 怪我をさせた課長は自ら辞表を出し、その課長の上司である取締役部長も役員を辞任すると取締役会に進退伺いを出した。一方、担当常務は取締役会から事実関係を問いただされても、まともに応えない。直接の部下である被害者の事情聴取にも協力せず、被害者の部下が入院している病院も教えない。そんなことが起ったわけです。
 この担当常務は、間違いなく直近の取締役会で解任が提案され、おそらく、会社にもいられなくなりますよ。

 巡業部長が被害者の関取の親方だったことで貴乃花親方=被害者と見られていますが、それは違う。被害者は怪我をした関取、加害者は殴った元横綱で、伊勢の浜親方にも監督責任があるでしょう。そして、警察ザタになるような事件が起ってしまった責任は、相撲協会、直接的には地方巡業全体に責任を負う巡業部長ということです。だから責任を問われて当然なんですよ。
 加害者側の伊勢が浜親方と同じ処分では重すぎるという意見がありますが、伊勢が浜親方は理事の辞任届を理事会に出しているわけで、自ら責任を感じ、自分から理事を降りるという決断をした。そこが貴乃花親方と決定的に違う。貴乃花親方は自分の処分が決まる理事会では弁明に終始したと報じられているわけで、責任を感じている者と責任を感じていない者に対する処分が同じはずはない。責任を自覚していない者に対する処罰が重くなるのはやむを得ない事だろう。

 もっとおかしいと思うのは、八角理事長がわざわざ「次の理事選挙に出る事は可能」と説明した事なんですね。理事解任を決めたけど、その処分は実質的にはそんなに重い処分ではないからねと、何だか言い訳をしているみたい。誰に、何のための言い訳なのか意味不明。理事会が出した結論をあまり余計な解釈を含めずに淡々と伝えれば良かったのだと思うんだけどどうだろう。

 こんなことを書きながら、自分が意外に相撲が好きなんだということ感じているわけですよ。だからムキになってこんな事を書いているんだなぁ。

 そして、私が一番気にしているのは、貴の岩関がちゃんと復帰できるのかどうかという事ですね。モンゴル力士会のこと、相撲に対する価値観の微妙なズレ、怪我からの回復と同じモンゴル出身の元横綱からの受けた大きな怪我によるショックからの回復、マスコミのこの事件の扱い方、貴乃花親方の対応と本人の気持ちが一致しているのかどうか等々、色んなものを抱え込んじゃったからね。ただただ、元気に土俵に上がってくれる日を待ってますよ。

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