2017年12月30日土曜日

慰安婦問題をめぐる日韓合意

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が、昨日(12月28日)慰安婦問題は日韓合意では解決しないと表明しました。その前日、韓国外相直属の検証チームが検証結果を発表しています。
 それによると、合意をめぐる交渉は朴槿恵(パククネ)大統領(当時)と安倍晋三首相の側近2人による「秘密交渉」で進められ、元慰安婦の意見が十分反映されなかったと指摘しています。「政府間で最終的・不可逆的解決を宣言したとしても問題は再燃するしかない。」と言及し、記者会見で発表した内容のほかに「非公開の内容」があったとの指摘もあります。
 非公開部分では、日本側は韓国政府に対し、ソウルの日本大使館前に慰安婦問題を象徴する少女像を建てた市民団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会」(挺対協)を説得する▽第三国での元慰安婦の追悼碑設置などを支援しないことを約束する▽国際社会で「性奴隷」という表現を使わない――の3点を要求。韓国側は消極的ながら受け入れていたとし、「不均衡な合意が一層不均衡になった」と結論づけました。
 当然、政府間合意の見直しであり、日本政府は反発していますが、「被害者の視点を欠いていた」とする報告書の指摘について、謙虚に耳を傾ける必要があるでしょう。黙殺するだけなら、韓国の世論を刺激し、合意見直しを求める声が高まるかもしれません。それは北朝鮮情勢が緊迫している中で、あまり得策とはいえません。

【日韓合意】
 日韓両政府は、2015年(平成27年)12月28日の日本の岸田文雄外務大臣と韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外交部長による外相会談後に行われた共同記者発表で、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認すると表明し、岸田外相は「当時の軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感している」と強調、「安倍晋三首相は日本国の首相として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に心からおわびと反省の気持ちを表明する」と語り、尹外相は「両国が受け入れうる合意に達することができた。これまで至難だった交渉にピリオドを打ち、この場で交渉の妥結宣言ができることを大変うれしく思う」と述べ、韓国政府が元慰安婦支援のため設立する財団に日本政府が10億円拠出し、両国が協力していくことを確認した。会談では、日韓両政府が今後国連など国際社会の場で、慰安婦問題を巡って双方とも非難し合うのを控えることも申し合わせが行われた。

 以下、日韓合意の内容。
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1 岸田外務大臣
 日韓間の慰安婦問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、日本政府として、以下を申し述べる。
(1)慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。  安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。
(2)日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。
(3)日本政府は上記を表明するとともに、上記(2)の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。  あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

2 尹(ユン)外交部長官
 韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、韓国政府として、以下を申し述べる。
(1)韓国政府は、日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し、日本政府が上記 1.(2)で表明した措置が着実に実施されるとの前提で、今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は、日本政府の実施する措置に協力する。
(2)韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。
(3)韓国政府は、今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

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