昨日、相撲協会の評議員会後、池坊議長は「貴乃花理事の解任が決定した。暴行問題に対して報告義務を怠り危機管理委員会の調査への協力を拒否した。公益法人の役員としては考えられない行為で忠実義務に反している」と述べて貴乃花親方の理事解任が全会一致で決議されたことを明らかにしました。相撲協会の理事が解任されるの初めてのことで、この処分を巡りSNS上では相撲協会へのバッシングが起こっています。いずれにしてもこれで今回の元横綱日馬富士関の暴行事件の関係者全員の処分が確定しました。
【関係者の処分の内容】
▶ 加害者である日馬富士関は、自ら引退を決意し、その後の警察の調査を経て、略式起訴され民事事件では最高額となる50万円の罰金を課せられました。後の理事会で「引退勧告」が妥当とされました。
▶ 事件の現場にいた横綱白鵬関は1か月半の減俸、同じく横綱鶴竜関は1か月の減俸処分が決まりました。また、照ノ富士関、石浦関に対しては、鏡山危機管理部長から注意がなされました。
▶ 日馬富士関の所属していた部屋の伊勢の浜親方は、理事会に辞任届を提出し受理されました。
▶ 相撲協会の八角理事長の処分は「国技たる大相撲の評価を著しく毀損するもの」「統率する立場にある以上、相応の責任がある」と理由付けされ、3か月の給与減額とされました。
▶ 貴乃花理事は「暴行問題に対して報告義務を怠り危機管理委員会の調査への協力を拒否した。公益法人の役員としては考えられない行為で忠実義務に反している」として理事解任が決定しました。
これが相撲協会が責任をもって出した結論であり、ここには一つの正義が貫かれていると私は受け止めています。
これらの処分が不当だとする意見を述べている人たちの多くが、貴乃花親方を被害者だとしています。しかし、それは違うでしょう。被害者は貴乃花部屋の貴ノ岩関です。貴乃花親方は貴ノ岩関の所属する部屋の親方です。暴行傷害事件の責任を取らせるわけですから、加害者、被害者、そして関係者の立場等は明確にしないと処分なんかできません。
そして次に多いのが「相撲協会が事件を公にしないでもみ消そうとした」「もみ消しに協力しないから処分された」という類のご意見です。これは貴乃花親方が事件当初、協会に対して怪我は大したことはないと報告しながら警察に被害届を出した理由として、同趣旨の発言をしていたことに由来すると思われますが、警察に被害届が出され捜査が進めば、司直の手をくぐりぬけて事件をうやむやにすることなどできるはずもなく、現に、スポーツ新聞で大々的に報道され、その後、2か月に及びテレビを通じて全国に知れ渡ることになりました。相撲協会も貴乃花親方の報告がなかったとはいえ、同席していた力士から直接情報を集めるなどやれることはあったという意味で、後追いだという批判を免れることはできませんが、マスコミも注目する中で、相撲協会の危機管理委員会が真相を明らかにしようとしているわけですから、ここで貴乃花親方は協力するべきだったんです。あれだけ注目を集めたわけですから、今さらもみ消しなんてできる状況にはありませんでした。
マスコミにも、相撲協会にも沈黙を続ける貴乃花親方を、孤軍奮闘する英雄と見る貴乃花親方ファンの気持ちがわからないこともありません。しかし、私には曲がりなりにも真相を究明しようとしている相撲協会に対して、協力もせず、親方しか知りえない真相や貴ノ岩関の状態等何も語らず、居留守を使い、果ては文書を携えた鏡山危機管理部長にドアも明けずにFAXで送っていただければ・・・というような対応をしていたのでは、明らかに対応を間違えていると感じられました。貴乃花親方の相撲協会に対する敵意がむき出しで、サングラスをつけ、長いマフラーを肩にかけ、無言で車に乗り込む貴乃花親方は、暴力組織のドンという風情を漂わせており心底怖いと感じました。また、貴乃花親方が貴ノ岩関が真相を語るのを避けている、あるいは貴ノ岩関に語られては困ることがあるから事情聴取を認めないのではないかという疑念を抱かせました。
評議員会の池坊議長が、「相撲は礼に始まり、礼に終わる。貴乃花親方は礼を欠いていた。」と述べたことを取り上げ、「礼を欠いているというなら白鵬関の待ったはどうなんだ」という意見も提起されています。場所中の行司判定を不服とする土俵下での「待った」や千秋楽で表彰後の万歳三唱は礼を欠いているではないかということですが、これはすでに八角理事長から厳重注意を受け、横綱審議委員会からも厳しく批判されていることで何も処分がなかったかのような批判は正しくありません。私は、白鵬関の土俵下での「待った」は、スポーツとしての相撲、勝ちにこだわる相撲を追及する外国人力士と、桜花を愛でる日本人の精神世界(散り際の美、潔さ)を大切にする『相撲道』を目指す価値観の違いであって、外国人力士に相撲の門を開いた時から抱えていたことだと捉えています。
さらに、モンゴル力士会が八百長の温床になっているという意見もでてきて、ガチンコ相撲を追求する貴乃花親方と、モンゴル力士会と一体となった相撲協会による八百長相撲の争いだという構図が提起されています。ここまで広げてしまうと、本当にそうなのかということも含めて、暴力事件というよりは相撲協会自身の抱える問題をどう解決するのかという話になってしまい、それは協会の大きな課題であることは間違いありませんが、今回の処分云々の話ではなくなっています。
他にもありますが、代表されるのはこんなところでしょうか。私は組織をちゃんとしていくのは組織自身であると思っており、組織が出した結論は尊重するという立場です。今回の顛末を見ていて、相撲が日本の伝統的なスポーツであり全国の根強いファンに支えられている以上、国民の意見を聞き、相撲協会の改善につなげていけるような仕組みを整備することが必要だと強く感じました。
最後にこれからの相撲協会の話をしましょう。
1.評議員7名というのは少なすぎます。池坊議長を除いて全員男性ですが、女性の評議員を増やすべきです。例えばこんな評議員会にしたらどうでしょう。理事会から3人、力士会から3人、学識経験者から3人、相撲の興行が行われる各地域からの代表6人、合計15人の評議員会でいかがですか?
2.罰則規程整備して、行為と処分の対応関係をわかりやすく整理したほうが良いと思いますが、いかがですか?例えば上位力士によるパワハラで、「通院が必要な怪我をさせた場合は2階級降格とする」みたいに決めておくというのはどうでしょう。また、「理事としての善管義務違反は理事降格としその後5年間は理事に立候補できないものとする。」のように理事の処分についても明文化したほうが良いですね。
3.本場所の取り組みについて、同部屋の対戦を組まないというルールは止めて、同部屋の取り組みも見られるようにしたらいかがでしょう。相撲ファンは観たいと思ってますよ。
4.力士と部屋あるいは相撲協会との関係を現代的な雇用関係にし、就業規則を作るなどして労働法規によって守られるようにしたらいいと思いますがいかがですか?
5.相撲ファンからの意見を取り入れて改善するための目安箱を設置したらどうですか?
相撲って良いですね。
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