参議院議員選挙が始まった。今回の選挙では何が争点となるのか・・
いくつか重要な問題があるが、中でも憲法改正が国のあり方を変える重要な問題だと思う。安倍首相は『憲法改正』をご自身の政治家としての使命だと考えているようで、改憲に意欲を見せている。衆議院では憲法改正を決める三分の二以上の議席を与党で持っており、参議院でも三分の二以上を獲得すればいよいよ憲法改正が現実味を帯びてくる。
安倍首相は新しい憲法の内容について自民党の憲法草案で示していると云っている。もちろん与党としては公明党の意向もありそのまま憲法改正案として出てくるとも思えないが、安倍首相が作りたい憲法の内容は草案の中に示されている。
そもそも政治家に新しい憲法を制定する権限があるのかという問題がはおいておき、草案の問題点を見ておきたい。これは、民医連という私の勤務する病院が参加する団体の憲法学習を通じて私が理解を深めたものである。
まず、私が一番の問題だと思うのは「自衛軍の創設」で、単に戦力不保持規定を削除して、自衛隊を自衛軍としただけではなく、9条の2で内閣総理大臣を最高指揮者とし、有事の際は閣議決定を経ずに行政各部を指揮監督する権限を与えた。こうして戦争へのハードルを限りなく低くし、現憲法の特徴である平和を人権として主張することを廃止し、将来に向かって非暴力平和主義の展望を奪おうとしている。しかも、文民統制を事実上骨抜きにし、自衛軍は国会承認なしにその任務遂行を可能としている。また、自衛軍の任務の一つに「緊急事態における公の秩序の維持」を定めており、戦争政策に反対する国民を弾圧した戦前の治安維持法を思い出させる。
二つ目の問題は、「公の強調」。自民党の憲法草案では、個人を超える価値として国家とつながる公益や公の秩序が強調されている。そして、前文では国に対する愛情を義務づけ国民の内心にまで干渉しようとしてる。国民の義務や責任を強調し、軍事裁判所の規定をを置くことで、人権保障規定という憲法の本質を歪め、国家が国民を支配する体制をめざすものとなっている。これは主権在民を掲げる現憲法を真っ向から否定するものである。
三つ目の問題は「地方自治」。現憲法95条では特定の地方公共団体に不利益な法律を作るときには、その地域の住民の住民投票が必要とされている。これを削除しようとするのが自民党の憲法草案で、そうなれば特定の自治体に不利益な法律を作ることもできるようになる。また、国と地方公共団体の適切な役割分担を規定しており、国防や外交、軍事、国際協力などは国の役割であり「地方は口を出すな」と云われているに等しい。そうなると、横須賀での原子力空母入港反対や普天間基地の辺野古移設反対を求める地方の動きは憲法違反となり、地方自治体の権限は大きく制限されることになる。地方の時代の終焉となることは間違いない。
国民の中には、「新しい時代に相応しい新しい憲法を」という主張に同調する向きもある。しかし、現憲法の価値を実現できていないのに、国民の権利の上に国をおき、権力への歯止めを緩やかにして国民は何を得られるというのか。それは戦前のような国家による統制と基本的人権の剥奪ではないのか。私にはそんな風にしか見えないのである。
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